副業で稼いだお金は、必ず雑所得になるわけではありません。
一方で、開業届を出したから、帳簿を作ったから、売上が300万円を超えたからという理由だけで、必ず事業所得になるわけでもありません。
事業所得になるか、業務に係る雑所得になるかは、その活動が社会通念上「事業」といえる程度に行われているかを中心に、継続性、営利性、規模、帳簿保存の有無などを総合して判断します。
特に注意が必要なのは、副業で赤字を出し、その赤字を給与所得と相殺しようとするケースです。事業所得の赤字は一定の場合に他の所得と損益通算できますが、雑所得の赤字は給与所得などと損益通算できません。
会社員
会社員として働きながら、副業でも収入があります。
副業で稼いだお金は、事業所得と雑所得のどちらになるのでしょうか?
税理士
副業であることだけを理由に、雑所得になるわけではありません。
副業でも、社会通念上「事業」といえる規模や実態があれば、事業所得になる可能性があります。
ただし、たまに仕事を受ける程度であったり、規模が小さかったり、帳簿や証拠資料をきちんと保存していなかったりする場合は、業務に係る雑所得と判断される可能性があります。
会社員
副業という名前でも、事業所得になることがあるのですね。
税理士
あります。
税法上は、「副業」という言葉だけで所得区分が決まるわけではありません。
たとえば、会社員が本業とは別に、Web制作、プログラミング、コンサルティング、ライティング、動画制作、ネット販売、講師業、広告収入などを継続して行っている場合があります。
その活動が、継続的に顧客を獲得し、自分で営業し、価格や契約条件を決め、相応の売上や労力を伴い、帳簿や請求書なども保存されているような実態であれば、事業所得として認められる余地があります。
会社員
逆に、雑所得になりやすいのはどのようなケースですか?
税理士
たとえば、たまに仕事を受けるだけ、取引件数が少ない、売上規模が小さい、営業活動をしていない、毎年赤字で改善活動もしていない、帳簿や証拠資料を保存していないといった場合は、雑所得と判断されやすくなります。
また、会社員が副業の赤字を作り、その赤字を給与所得と相殺することを主な目的にしているようなケースは、税務上かなり注意が必要です。
会社員
事業所得か雑所得かは、何を基準に判断するのですか?
税理士
基本は、その所得を得るための活動が、社会通念上「事業」といえる程度で行われているかです。
国税庁の所得税基本通達35-2でも、事業所得かどうかは、その所得を得るための活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかで判定する考え方が示されています。
具体的には、営利性、継続性、反復性、自己の危険と計算による企画遂行性、投じた労力、人的・物的設備、取引の目的、職歴、生活状況、活動の規模などを総合して見ます。
会社員
帳簿を作っていれば、事業所得になりますか?
税理士
帳簿の記録・保存は非常に重要です。
取引を帳簿に記録し、帳簿書類を保存している場合は、一般的には営利性、継続性、企画遂行性があると見られやすく、事業所得に区分される場合が多いとされています。
ただし、帳簿さえ作れば自動的に事業所得になるわけではありません。
収入金額が僅少な場合や、継続して赤字であり、売上を増やす営業活動や黒字化の努力が見られない場合などは、帳簿があっても個別判断になります。
会社員
よく聞く「300万円基準」はどう考えればよいですか?
税理士
300万円を超えれば必ず事業所得になる、という基準ではありません。
ここは非常に誤解されやすいところです。
国税庁の通達では、帳簿書類の保存がない場合は原則として雑所得の方向で考えつつ、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は例外的に事業所得となる余地がある、という整理がされています。
つまり、300万円は「事業所得と雑所得を機械的に分ける線」ではありません。
また、ここでいう300万円は利益ではなく、収入金額です。
会社員
収入が300万円以下だと、必ず雑所得ですか?
税理士
いいえ。300万円以下だから必ず雑所得、ということでもありません。
国税庁の通達解説では、収入金額が僅少かどうかの例示として、概ね3年程度にわたり、収入金額が300万円以下で、かつ主たる収入の10%未満である場合が示されています。
ただし、これも絶対的な法定基準ではありません。
収入規模、顧客数、取引回数、営業活動、設備、労力、黒字化の見込み、帳簿保存などを総合して判断します。
会社員
開業届を出していれば、事業所得として申告できますか?
税理士
開業届を出していることは、事業として行う意思を示す資料の一つにはなります。
しかし、開業届を出しただけで事業所得と確定するわけではありません。
実際に、継続的・反復的に事業活動をしているか、利益を得るための活動をしているか、顧客獲得活動をしているか、帳簿や証拠資料を保存しているかなど、実態から判断します。
会社員
青色申告承認申請書を出していればどうですか?
税理士
青色申告を利用できるのは、原則として不動産所得、事業所得、山林所得です。
業務に係る雑所得そのものについて、青色申告をする制度ではありません。
そのため、青色申告承認申請書を出しているからといって、副業収入が必ず事業所得になるわけではありません。
副業の実態が事業所得に当たるかを確認したうえで、青色申告の要件を満たすかを判断します。
会社員
事業所得と雑所得では、税金上どこが大きく違いますか?
税理士
大きな違いは、特に赤字の扱いです。
事業所得で赤字が出た場合は、一定のルールにより、給与所得など他の所得と損益通算できることがあります。
一方、雑所得の赤字は、給与所得など他の所得と損益通算できません。
また、事業所得で青色申告の要件を満たす場合は、青色申告特別控除や純損失の繰越控除などの制度を使える可能性があります。
業務に係る雑所得では、これらの青色申告制度は使えません。
事業所得と雑所得の主な違い
| 項目 | 事業所得 | 業務に係る雑所得 |
|---|---|---|
| 必要経費 | 認められる | 認められる |
| 給与所得などとの赤字の損益通算 | 一定の場合に可能 | できない |
| 青色申告 | 要件を満たせば可能 | 対象外 |
| 青色申告特別控除 | 要件を満たせば可能 | 対象外 |
| 青色申告の純損失繰越 | 要件を満たせば可能 | 対象外 |
会社員
副業が赤字なら、事業所得にした方が有利ということですか?
税理士
税額だけを見ると、事業所得の赤字を給与所得と損益通算できれば有利になる場合があります。
しかし、だからといって、実態が雑所得に近い副業赤字を事業所得として申告するのは危険です。
たとえば、給与所得500万円があり、副業赤字200万円を事業所得として相殺するようなケースでは、その副業が本当に社会通念上の事業といえるかが税務上重要になります。
継続的な顧客獲得、営業活動、売上拡大の努力、帳簿保存、黒字化の見込みなどが説明できない場合は、雑所得と判断され、損益通算が否認されるリスクがあります。
会社員
副業が毎年赤字でも、事業所得になることはありますか?
税理士
赤字であることだけで、直ちに事業所得ではないと決まるわけではありません。
ただし、概ね継続して赤字であり、しかも売上を増やすための営業活動や、黒字化するための改善活動を行っていない場合は、営利性が認められにくくなります。
赤字の場合は、広告、営業、価格改定、顧客開拓、経費削減、事業計画の見直しなど、利益を出すための具体的な活動をしているかが重要です。
会社員
副業がアルバイトの場合も、事業所得か雑所得で考えるのですか?
税理士
いいえ。
別会社と雇用契約を結び、アルバイト代やパート代として給与を受け取っている場合は、通常は給与所得です。
この場合は、事業所得か雑所得かという二択ではありません。
副業といっても、雇用契約なのか、業務委託・請負なのか、原稿料・講演料・販売収入なのかによって、所得区分の入口が変わります。
会社員
実際に判断するには、何を確認すればよいですか?
税理士
副業の具体的な仕事内容、雇用契約か業務委託か、開始してからの年数、年間収入、所得金額、本業の給与収入、顧客数、取引件数、営業活動の有無、価格設定の自由度、設備や外注の有無を確認します。
また、帳簿、請求書、領収書、契約書、入出金記録を保存しているか、過去数年の黒字・赤字の状況、赤字の場合の改善活動、開業届や青色申告承認申請書の提出状況も確認します。
特に、給与所得との損益通算を予定している場合は、慎重に判断する必要があります。
町田・相模原で副業の確定申告に不安がある方へ
副業収入は、雑所得として申告すればよいケースもありますが、継続性や規模、帳簿保存の状況によっては、事業所得として整理できる可能性もあります。
一方で、副業赤字を事業所得として給与所得と相殺する場合は、税務上のリスクが高くなります。
町田・相模原で、副業の確定申告、事業所得と雑所得の判断、青色申告、帳簿保存、赤字の損益通算に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の所得区分は、副業の内容、収入規模、取引件数、帳簿保存状況、黒字・赤字の状況、営業活動、給与所得との損益通算の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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