社長の役員報酬は、会社の利益調整や節税を考えるうえで重要な項目です。
しかし、役員報酬は「毎月同じ金額を払っていれば必ず経費になる」というものではありません。
法人税法では、役員給与のうち「不相当に高額な部分の金額」は、法人税上の損金に算入しないとされています。
つまり、定期同額給与などの要件を満たしていても、金額そのものが高すぎると判断されれば、その過大部分が税務上経費として認められない可能性があります。
経営者
社長の役員報酬が高すぎると、税務署に否認されることがありますか?
税理士
はい。社長に対する役員報酬が、その職務の対価として不相当に高額と認められる場合、その高すぎる部分は法人税上、損金不算入となる可能性があります。
ここで重要なのは、高額だから全額否認されるということではなく、原則として相当額を超える部分が問題になるという点です。
経営者
役員報酬については、毎月同じ金額なら大丈夫だと思っていました。
税理士
そこは分けて考える必要があります。
毎月同じ金額で支給する定期同額給与の要件は、法人税法34条1項の問題です。
一方で、今回の論点は、そもそも役員報酬の金額自体が高すぎないかという問題です。
たとえ定期同額給与の要件を満たしていても、金額が不相当に高額であれば、法人税法34条2項により、過大部分が損金不算入となる可能性があります。
経営者
何を基準に「高すぎる」と判断されるのですか?
税理士
法人税法施行令70条では、大きく分けて実質基準と形式基準の2つの考え方があります。
実質基準では、社長の職務内容、会社の収益、従業員に対する給与の支給状況、同種の事業を営み、事業規模が類似する法人の役員給与の支給状況などを見て、その役員の職務の対価として相当かどうかを判断します。
形式基準では、定款や株主総会決議などで定めた役員報酬の限度額を超えていないかを確認します。
経営者
株主総会で役員報酬を決議していれば大丈夫ではないのですか?
税理士
株主総会で決議していることは重要ですが、それだけで税務上必ず安全というわけではありません。
株主総会で決めた限度額を超えていれば、形式基準で問題になります。
しかし、限度額の範囲内であっても、会社の規模、利益、社長の職務内容、従業員給与、同業類似法人の報酬水準などから見て不相当に高額であれば、実質基準で否認される可能性があります。
つまり、「株主総会で年3,000万円まで決議しているから大丈夫」というだけでは足りません。
経営者
実質基準と形式基準の両方を見るということですか?
税理士
はい。
法人税法施行令70条では、実質基準による過大額と、形式基準による過大額のうち、いずれか多い金額が過大役員給与として扱われます。
そのため、形式的な株主総会決議だけでなく、実質的にその報酬額が職務の対価として合理的かどうかを説明できることが必要です。
経営者
同業他社の社長報酬と比べられるのですか?
税理士
はい。同業類似法人との比較は重要な要素です。
法人税法施行令70条では、同種の事業を営み、事業規模が類似する法人の役員給与の支給状況が、判断要素として明記されています。
そのため、税務署が調査で、同業・同規模の法人の代表者報酬と比較することは十分に考えられます。
実際に、国税不服審判所の平成29年4月25日裁決でも、同業類似法人の代表者に対する役員給与の最高額を超える部分が、不相当に高額な部分と判断された事例があります。
経営者
では、同業他社の最高額を超えたら必ず否認されるのですか?
税理士
いいえ。そこは少し慎重に考える必要があります。
裁決例では、同業類似法人の役員給与が重要な判断材料になっていますが、「類似法人の最高額を超えたら必ず否認」という機械的なルールがあるわけではありません。
法令上は、社長の職務内容、会社の収益、従業員給与、類似法人の状況などを総合的に見て判断します。
したがって、同業他社より高い報酬であっても、それを説明できる特別な事情があるかどうかが重要です。
経営者
たとえば、どのような事情があれば説明材料になりますか?
税理士
たとえば、社長自身が営業、技術、商品開発、資金調達、重要取引先との関係維持などを中心的に担っている場合は、職務内容として説明材料になります。
また、特殊な資格やノウハウを持っている、会社の売上や利益の大部分が社長本人の信用や営業力によって生み出されている、借入金の個人保証をしている、創業者として重要な経営判断を担っているといった事情も、報酬額の合理性を説明する材料になり得ます。
ただし、口頭で「社長が頑張っている」と言うだけでは弱いです。
職務内容、勤務実態、営業実績、利益への貢献、会社の業績などを、客観的な資料で説明できるようにしておく必要があります。
経営者
具体的に、どのくらいの金額なら安全という基準はありますか?
税理士
「年収いくらまでなら安全」という絶対的な金額基準はありません。
たとえば、社長報酬が年3,000万円でも、会社が高収益で、社長自身が営業・技術・経営の中核を担い、その社長によって利益が生み出されているような会社であれば、相当性を説明できる余地があります。
一方で、会社利益がほとんど残らず、従業員給与との乖離が極端で、同規模同業他社の代表者報酬が年1,000万円前後であるのに、社長だけ年5,000万円というような状況では、税務調査上の説明負担は重くなります。
経営者
高めの役員報酬を設定する場合、何を残しておけばよいですか?
税理士
株主総会議事録だけでなく、報酬額を決めた時点の資料を残しておくことが重要です。
たとえば、売上高、営業利益、経常利益、従業員給与、社長の職務内容、勤務状況、営業実績、利益への貢献、同業同規模法人の報酬水準などを整理した報酬額算定メモを残しておくとよいです。
特に高額報酬の場合は、「なぜこの報酬額が職務の対価として合理的なのか」を、後から説明できる形にしておく必要があります。
経営者
期中で役員報酬を増額する場合も注意が必要ですか?
税理士
はい。今回の「金額が高すぎるか」という論点とは別に、期中増額の場合は定期同額給与の要件にも注意が必要です。
役員報酬は、原則として事業年度開始の日から一定期間内に改定し、その後は毎月同額で支給する必要があります。
そのため、期中で増額する場合には、過大役員給与の問題だけでなく、定期同額給与として損金算入できるかどうかも別途確認する必要があります。
町田・相模原で役員報酬の設定に不安がある方へ
役員報酬は、法人税、所得税、社会保険、会社の資金繰りに影響する重要な項目です。
一方で、社長報酬を高くしすぎると、過大役員給与として法人税上の損金算入が否認されるリスクがあります。
特に、会社の利益水準に比べて社長報酬が高い場合、従業員給与との乖離が大きい場合、同業同規模法人と比べて高額な場合には、事前に整理が必要です。
町田・相模原で役員報酬の設定、増額、法人税上のリスクに不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の役員報酬の相当性は、会社の業種、規模、利益水準、社長の職務内容、従業員給与、株主総会決議、同業類似法人の報酬水準などにより異なります。高額な役員報酬を設定する場合は、個別判断が必要です。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




