個人事業から法人化、いわゆる法人成りをするとき、個人事業主として加入していた経営セーフティ共済をどうするかは、非常に重要です。
結論からいうと、個人事業で加入している経営セーフティ共済、正式には中小企業倒産防止共済は、法人成りの際に一定の要件を満たせば、新しく設立した法人へ共済契約者の地位を承継できます。
ここで重要なのは、個人でいったん解約して、解約手当金を受け取り、その後に法人で新規加入するという処理ではないという点です。
制度上は、個人の共済契約そのものを法人へ引き継ぐ契約承継の手続です。承継が成立すれば、原則として解約として扱う必要はありません。
経営者
個人事業から法人化する予定です。
個人事業で加入している経営セーフティ共済は、会社へ引き継げますか?
税理士
はい。一定の要件を満たせば、個人事業で加入している経営セーフティ共済を、新しく設立した法人へ引き継ぐことができます。
この場合、個人契約をいったん解約して、法人で入り直すのではありません。
「契約承継」という手続により、共済契約者の地位を個人から法人へ移す形になります。
経営者
解約してから、会社で新しく入り直すのとは違うのですか?
税理士
違います。
法人成りの場面では、まず解約ではなく承継を検討すべきです。
個人契約を解約すると、解約手当金を受け取ることになり、個人側で収入計上や課税関係が問題になります。
一方、承継手続を行う場合は、個人の共済契約上の地位を法人へ引き継ぐため、制度上は解約手当金を受け取る処理を挟みません。
経営者
承継するには、いつまでに手続きが必要ですか?
税理士
原則として、法人設立日から3か月以内に承継の申出を行います。
中小機構の手続案内では、法人成りの場合、承継事由発生日を法人成りをした日、つまり設立年月日として扱っています。
そのため、法人を設立してから慌てて確認するのではなく、設立準備の段階で、経営セーフティ共済を承継するかどうかを決めておくべきです。
経営者
新しく作った会社は、設立してすぐなので、1年以上事業をしていません。それでも承継できますか?
税理士
法人成りによる承継の場合は、通常の新規加入で問題となる「引き続き1年以上事業を行っていること」は要求されません。
ただし、承継する法人が経営セーフティ共済の加入資格を満たす中小企業者であることは必要です。
そのため、法人の業種、資本金、従業員数などを確認する必要があります。
経営者
個人事業の一部だけを法人へ移す場合でも、同じように承継できますか?
税理士
そこは注意が必要です。
中小機構の手続では、法人成りは、個人事業の全部譲渡として整理されます。
そのため、個人事業の全部を法人へ移すのか、一部だけを移すのかによって、承継の可否や必要書類の確認が変わる可能性があります。
また、個人事業主本人が法人設立時から役員として登記されているかも確認されます。
形式だけ法人を作ったものの、実態として個人事業を法人へ移していない場合には、単純な法人成り承継として扱えない可能性があります。
経営者
手続には、どのような書類が必要ですか?
税理士
中小機構の案内では、法人成りによる承継の場合、契約承継申出書、掛金預金口座振替申出書などを準備します。
具体的には、契約承継申出書、様式㊥501、掛金預金口座振替申出書、様式㊥105などです。
また、承継後は法人契約になりますので、掛金の引落口座も法人名義の口座へ変更する必要があります。
個人名義口座のまま、法人契約として引き落とすことはできないとされています。
経営者
個人時代に払った掛金は、会社でも経費にできますか?
税理士
それはできません。
個人事業主が支払った経営セーフティ共済の掛金は、一定の要件を満たせば、個人事業の必要経費になります。
一方、承継後に法人が支払う掛金は、一定の要件を満たせば、法人の損金になります。
しかし、個人時代にすでに必要経費にした過去の掛金を、法人側でもう一度損金にすることはできません。
個人で支払った過去分と、法人承継後に法人が支払う分は、明確に分けて処理します。
経営者
では、承継した時点で、法人の会計には何も処理しなくてよいのですか?
税理士
ここは慎重に確認すべき部分です。
経営セーフティ共済の契約上の地位には、過去に支払った掛金や将来の解約手当金につながる経済的価値があります。
そのため、法人成りの事業譲渡契約や法人の開始貸借対照表で、その経済的価値をどのように扱うかは別途検討が必要です。
今回確認した範囲では、個人から法人への契約承継時における経済価値そのものの会計・税務処理について、国税庁の直接的な公式見解は確認できていません。
既払掛金が多額の場合は、税理士による個別確認が必要です。
経営者
承継せずに放置すると、どうなりますか?
税理士
個人事業の全部を法人へ移したにもかかわらず承継手続きをしない場合、原則としてみなし解約になる可能性があります。
みなし解約になると、解約手当金の課税関係が問題になります。
また、2024年10月1日以後は、経営セーフティ共済を解約して再加入する場合、一定期間の掛金について必要経費や損金算入が制限される改正も入っています。
ただし、個人契約を解約した後に、別人格である新設法人が新規加入するケースへ、この制限をどのように適用するかは、事実関係により確認が必要です。
いずれにしても、法人成りの際は、解約・再加入よりも、まず承継手続が可能かを確認するのが安全です。
経営者
結局、法人化するときには何をすればよいですか?
税理士
まず、法人設立日を確認し、3か月以内に承継申出ができるよう準備してください。
次に、個人事業の全部を法人へ移す法人成りなのか、新設法人が中小企業者要件を満たすか、個人事業主本人が法人設立時から役員になっているかを確認します。
そのうえで、契約承継申出書、掛金預金口座振替申出書、法人名義の引落口座を準備します。
また、現在までの掛金総額、納付月数、一時貸付金や共済金の未返済の有無も確認してください。
税務上は、個人時代に必要経費にした掛金を法人で二重に損金処理しないこと、承継時の経済価値をどう扱うかを確認することが重要です。
町田・相模原で法人成りを予定している方へ
法人成りでは、会社設立、個人事業の廃業、資産・負債の引継ぎ、売掛金・買掛金の整理、消費税、社会保険、各種契約の名義変更など、多くの手続が同時に発生します。
経営セーフティ共済も、その一つです。
特に、掛金を長期間支払っている場合や、掛金総額が大きい場合には、安易に解約すると税務上の影響が大きくなることがあります。
町田・相模原で法人成りを検討している方、個人事業から法人への引継ぎを整理したい方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、法人設立日、事業譲渡の内容、法人の加入資格、既払掛金、一時貸付金の有無、承継時の会計処理などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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