「不動産投資をすれば節税になりますよ」。
営業担当者の言葉やSNSの投稿でそんな話を見かけて、なんとなく気になっている方は多いのではないでしょうか。
毎月の給与明細で天引きされる所得税・住民税の金額を見るたびに、「何かできることはないのか」と思う気持ちはよく分かります。
ただ、実際に調べ始めると「損益通算」「減価償却」「確定申告」といった聞き慣れない言葉が並び、結局自分に関係あるのかどうか分からないまま終わってしまう方も少なくありません。
会社員は年末調整で税金の手続きが完結するのが普通なので、確定申告そのものにハードルを感じるのも無理はないと思います。
この記事では、給与所得者(サラリーマン)が不動産投資でなぜ節税できると言われるのか、その仕組みと確定申告の具体的な流れ、そして知らずに始めると損をしてしまうポイントを整理します。
なぜ「不動産投資は節税になる」と言われるのか
給与所得者の節税というと、ふるさと納税やiDeCoを思い浮かべる方が多いと思います。
不動産投資による節税は、これらとは少し仕組みが違います。
ポイントは「不動産所得の赤字を給与所得と相殺できる」という点です。
これを損益通算と呼びます。
不動産所得は「家賃収入-必要経費」で計算されます。
管理費・修繕費・固定資産税・火災保険料・ローン利息などが経費になりますが、なかでも節税の主役になるのが減価償却費です。
建物の購入費用を一括で経費にするのではなく、法定耐用年数(木造は22年、鉄筋コンクリート造は47年など)にわたって少しずつ経費計上する仕組みで、実際にお金が出ていかないのに帳簿上は経費になるという特徴があります。
この減価償却費によって不動産所得が赤字になった場合、その赤字分を給与所得から差し引くことで、課税対象になる所得全体が圧縮され、結果として所得税・住民税の負担が軽くなります。
不動産投資による節税の全体像や向き・不向きについては不動産投資の節税、本当に得する人・損する人の違いとはでも整理していますので、あわせて見てみてください。
この記事では、そのなかでも給与所得者ならではの実務に絞って解説していきます。
確定申告の具体的な流れ
損益通算は、確定申告をしなければ適用されません。
会社員でも、不動産所得が発生した年は自分で申告する必要があります。
流れは次の通りです。
- 必要書類を集める:源泉徴収票、家賃収入の明細、ローンの返済予定表、固定資産税の納税通知書、火災保険などの証明書
- 収支内訳書(白色申告)または青色申告決算書を作成する:家賃収入から必要経費を差し引き、不動産所得(多くの場合は赤字)を計算する
- 確定申告書を作成・提出する:申告期間は毎年2月16日〜3月15日が目安で、税務署の窓口・郵送・e-Taxのいずれかで提出する
- 還付を受ける:損益通算の結果、源泉徴収されていた所得税の一部が還付されることがある
青色申告を選ぶと、要件を満たせば最大65万円の青色申告特別控除が受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越せるというメリットもあります。
事前に税務署へ開業届と青色申告承認申請書を提出しておく必要があるので、投資を始めるタイミングで一緒に手続きしておくと安心です。
減価償却費の具体的な計算方法や、中古物件を購入した場合の耐用年数の考え方については不動産投資の減価償却、結局いくら経費にできる?で詳しく解説しています。
見落としがちな「20万円ルール」と住民税の落とし穴
「給与以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要」というルールを聞いたことがある方もいるかもしれません。
これは所得税に限った話で、住民税にはこの20万円以下の申告不要ルールが存在しません。
不動産所得が数万円の赤字であっても、本来は市区町村へ住民税の申告が必要になるケースがあるため、「20万円以下だから何もしなくていい」と思い込むのは危険です。
実務上は、所得税の確定申告をしておけば住民税の申告も自動的に反映されるので、少額でもきちんと申告しておくのが確実です。
つまずきやすいポイント・よくある誤解
不動産投資の節税には、知っておかないと後で困る落とし穴もあります。
- 節税ではなく「納税の先送り」になることがある:運用中に計上した減価償却費は、物件を売却するときの取得費から差し引かれます。
そのため売却時の譲渡所得が大きくなり、結果として売却時にまとまった税負担が発生することがあります。
今年得をした分、将来支払う税金が増える可能性があると考えておくと実態に近いです。 - 赤字前提の物件選びは本末転倒:節税効果を優先して収益性の低い物件を選んでしまうと、家賃収入が伸び悩んだときに手元資金が枯渇するリスクがあります。
不動産投資はあくまで資産運用であり、節税はその副次的な効果と捉えるほうが安全です。 - 節税効果には向き不向きがある:減価償却による節税効果は、所得税率が高い人ほど大きくなります。
目安として課税所得900万円未満の方は、恩恵が限定的になりやすいと言われています。
自分の所得水準で本当に効果が出るのか、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
不動産投資以外の節税方法も含めて会社員が使える制度の全体像を押さえておきたい方は、サラリーマンの節税、何から始める?会社員でも取り戻せるお金の話もあわせて読んでみてください。
まとめ
不動産投資の節税は、減価償却費による赤字と給与所得の損益通算という仕組みで成り立っています。
確定申告の流れや20万円ルールの落とし穴を理解したうえで、節税だけを目的にせず、物件そのものの収益性も含めて総合的に判断することが大切です。
関連記事
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
Latest entries
税金あれこれ2026年8月18日結婚したら税金は本当に安くなる?配偶者控除の仕組みとタイミングの見極め方
所得税2026年8月18日年末調整しても確定申告は必要?副業・医療費控除・ふるさと納税を税理士が解説
所得税2026年8月17日ワンストップ特例制度とは?ふるさと納税を確定申告なしで控除?税理士が解説
法人税2026年8月17日会社が赤字でも法人税の確定申告は必要?申告期限と欠損金の繰越しを税理士が解説







