「不動産投資をすると減価償却で節税になる」という話を聞いたことはあっても、具体的にいくら税金が減るのかを数字で説明できる人は少ないのではないでしょうか。
営業担当者から「年間○十万円お得です」と言われても、その根拠が自分の年収や物件に本当に当てはまるのかは分かりにくいものです。
ここでは、減価償却の仕組みをおさらいしたうえで、年収別のシミュレーションと、見落としがちな落とし穴を順番に整理していきます。
減価償却で税金が減る仕組み
不動産投資における減価償却とは、建物の購入価格を法律で決められた年数(法定耐用年数)に分けて、毎年少しずつ経費として計上する仕組みです。
土地は劣化しないため対象にならず、建物部分だけが計算の対象になります。
ポイントは、減価償却費は実際にお金が出ていかない経費だということです。
ローンの返済とは別に、帳簿の上だけで経費が積み上がるため、賃貸収入から必要経費と減価償却費を引いた「不動産所得」が赤字になることがあります。
この赤字は、サラリーマンであれば給与所得と損益通算(かんたんに言うと、赤字と黒字を相殺すること)でき、結果として所得税・住民税の負担が軽くなります。
そもそも不動産投資の節税効果は人によって大きく差があるので、不動産投資の節税、本当に得する人・損する人の違いも合わせて確認しておくと判断を誤りにくくなります。
実際にいくら節税できるのか:年収800万円と1,000万円で比べると
同じ建物・同じ減価償却費でも、節税額は年収(正確には課税所得)によって変わります。
これは日本の所得税が、所得が増えるほど税率も上がる「累進課税」のためです。
所得税の税率は課税所得695万円超899万円以下で23%、900万円超1,799万円以下で33%と、課税所得900万円を境に税率が10ポイント変わります。
ここに住民税(原則10%)を合わせた合計の税率で、節税額のおおよその目安を計算してみます。
築20年の軽量鉄骨造(法定耐用年数27年)のアパート、建物価格1,500万円を購入したケースを考えてみましょう。
中古物件の耐用年数の求め方は後述しますが、ここでは残りの耐用年数が11年だとします。
年間の減価償却費は1,500万円÷11年で約136万円です。
賃貸収入から管理費やローン金利などを引いた段階の利益が20万円だとすると、減価償却費を引いた不動産所得は136万円−20万円でマイナス116万円の赤字になります。
- 課税所得800万円の会社員の場合:所得税23%+住民税10%=33%。
116万円×33%で節税額はおよそ38万円 - 課税所得1,000万円の会社員の場合:所得税33%+住民税10%=43%。
同じ116万円の赤字でも43%をかけるため節税額はおよそ50万円
同じ建物・同じ赤字額でも、税率が高い人ほど節税の効果が大きくなることが分かります。
ただしこれは単純化した目安であり、実際の税額は他の所得や控除との組み合わせで変わるため、正確な金額は税理士や確定申告時の計算で確認してください。
中古物件の耐用年数、簡便法で自分の物件を計算してみる
減価償却費を計算するには、まず自分の物件の「残りの耐用年数」を知る必要があります。
新築ではない中古物件には「簡便法」という簡易な計算方法が使えます。
- 法定耐用年数をすべて経過した物件:耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%(例:築30年の木造〔法定22年〕→22年×0.2=4.4年→4年に切り捨て)
- 法定耐用年数の一部を経過した物件:耐用年数 =(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%(例:築20年の軽量鉄骨〔法定27年〕→(27−20)+20×0.2=7+4=11年)
主な構造ごとの法定耐用年数は、木造22年・木骨モルタル造20年・軽量鉄骨造(骨格材の厚さ3mm以下)19年・(3mmを超え4mm以下)27年・重量鉄骨造(4mmを超える)34年・鉄筋コンクリート造/鉄骨鉄筋コンクリート造47年です(国税庁の耐用年数表にもとづく数字で、記事やサイトによって古い数字が使われている場合があるので購入前に必ず確認しましょう)。
耐用年数が短い木造の中古物件ほど年間の減価償却費が大きくなりやすい一方、その分「使い切る」までの期間も短くなります。
より詳しい計算の手順や按分の考え方は、不動産投資の減価償却、結局いくら経費にできる?計算の仕組みや中古物件の減価償却、耐用年数はどう決まる?で詳しく解説しています。
つまずきやすいポイント:デッドクロスと短期譲渡のリスク
減価償却を使った節税には、見落としやすい落とし穴が2つあります。
1つ目は「デッドクロス」です。
減価償却費を計上できる期間が終わると、帳簿上の経費は減りますが、ローンの元本返済(これは経費にならない支出です)は続きます。
そのため、ある時点から手元のお金は減るのに税金上の利益は増えるという逆転現象が起こります。
先ほどの例では、11年間の減価償却が終わった12年目以降にこの現象が起きやすくなるため、物件を保有する前に「償却が終わったあとのキャッシュフロー」まで見込んでおく必要があります。
そもそも減価償却が節税になるかどうかの基本的な仕組みを勘違いしているケースも多いので、減価償却は節税になる?勘違いしやすい仕組みも参考にしてください。
2つ目は売却時の税率です。
節税効果を優先して耐用年数の短い築古の木造物件を選ぶと、短期間で売却した場合に不動産の譲渡所得に対して高い税率がかかることがあります。
所有期間が5年以下の短期譲渡では、所得税と住民税を合わせて39.63%という高い税率が課されるため、「節税額」より「売却時の税負担」が大きくなっては本末転倒です。
購入時には、保有中の節税効果だけでなく、将来売却するときの税負担まで含めて計画を立てることが大切です。
まとめ
不動産投資の減価償却による節税額は、建物の構造や築年数、そして自分の年収(課税所得)によって大きく変わります。
シミュレーションで大まかな金額をつかんだうえで、デッドクロスや売却時の税率といった先に起こることまで見通してから判断するようにしましょう。
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