飲食店では、家族や知人に料理を無料で出すことがあります。
「お金をもらっていないのだから売上ではない」と考えたくなりますが、税務上は、無料提供であっても収入や益金の計上が必要になるケースがあります。
特に、個人事業か法人か、相手が家族・知人・役員・従業員のいずれか、私的な提供なのか事業目的の提供なのかによって、所得税・法人税・消費税の取扱いが変わります。
経営者
飲食店を経営しています。家族や知人に料理を無料で出した場合、売上にしないといけませんか?
税理士
無料で提供していても、税務上は収入や益金を計上する必要があるケースがあります。
特に、個人事業主が自分や同一生計の家族のために店の商品を消費した場合は「家事消費」として扱われます。
また、知人などへ私的に無料提供した場合は、販売用の棚卸資産を贈与したものとして、事業所得の総収入金額に算入される可能性があります。
経営者
お金をもらっていないのに、なぜ売上のように扱うのですか?
税理士
販売用の商品を自分で使ったり、私的に人へあげたりした場合、税務上は「本来販売できたものを事業外で消費した」と考えます。
そのため、個人事業では、所得税法上、家事消費や棚卸資産の贈与について、一定の金額を事業所得の総収入金額に算入する仕組みになっています。
飲食店でいえば、通常販売している料理や食材を、事業主本人、同一生計の家族、知人などに無償提供した場合が問題になります。
経営者
では、いくらを売上のように計上するのですか?通常の販売価格そのままですか?
税理士
原則は、通常販売している価額です。
ただし、所得税の実務では、販売用資産を家事消費や贈与した場合、帳簿に一定の金額を記載していれば、その金額を収入金額として扱える場合があります。
目安としては、通常販売価額の70%相当額と原価のいずれか高い金額です。
つまり、原則は通常販売価格ですが、帳簿記載を前提に、少なくとも「通常販売価額の70%」と「原価」の高い方を計上する、という考え方です。
経営者
知人にサービスで料理を出した場合も、同じように考えるのですか?
税理士
私的なサービスとして知人に無料提供した場合は、棚卸資産の贈与として収入計上の対象になり得ます。
一方で、その知人が取引先であり、販売促進、接待、試食提供などの事業目的がある場合は、単なる私的贈与ではなく、交際費、広告宣伝費、見本品費などの問題として整理する余地があります。
そのため、「誰に出したか」だけでなく、「何の目的で出したか」を記録しておくことが重要です。
経営者
法人が経営する飲食店の場合はどうなりますか?
税理士
法人の場合も、無償で資産を譲渡したり、役務を提供したりした場合には、原則として時価相当額の収益を認識する必要があります。
そのうえで、相手や目的に応じて、対応する費用側の処理を判断します。
たとえば、取引先への接待であれば交際費、販売促進目的の試食であれば広告宣伝費や見本品費、役員への私的な提供であれば役員給与や寄附金などが問題になります。
法人では「収益を立てれば終わり」ではなく、相手方と目的に応じた費用区分まで確認する必要があります。
経営者
従業員にまかないを出す場合も、売上や給与になるのですか?
税理士
従業員への食事提供は、福利厚生費や給与課税の問題として別途判断します。
一定の要件を満たす食事補助であれば福利厚生として処理できる場合がありますが、役員や従業員へ反復して無料提供している場合には、給与課税や源泉徴収の問題が出る可能性があります。
今回の「家族や知人への無料提供」とは似ていますが、従業員食事は別論点として整理した方が安全です。
経営者
消費税も同じように売上として課税されるのですか?
税理士
所得税・法人税上の収入認識と、消費税上の課税売上は必ずしも一致しません。
消費税では、個人事業者が事業用資産を家事のために消費・使用した場合や、法人が役員へ資産を贈与した場合には、対価を得て行った資産の譲渡とみなされることがあります。
一方、単なる知人への無償提供については、原則として対価を得ていないため、消費税の課税売上にならない可能性があります。
この点は、所得税・法人税の考え方と混同しやすいので注意が必要です。
経営者
では、記録としては何を残しておけばよいですか?
税理士
最低限、無料提供した日付、相手、人数、料理内容、通常販売価格、提供目的を記録しておくべきです。
個人事業で家事消費や贈与として処理する場合は、通常販売価額、原価、70%基準で計算した金額などを確認できるようにしておきます。
法人の場合は、相手が役員、従業員、取引先、一般の知人のいずれか、提供目的が接待、広告宣伝、福利厚生、私的提供のいずれかを区分しておく必要があります。
経営者
結局、飲食店が家族や知人へ無料で料理を出す場合は、どう考えればよいですか?
税理士
まず、個人事業か法人かで分けて考えます。
個人事業では、事業主本人や同一生計の家族が食べたものは家事消費、知人への私的な無料提供は棚卸資産の贈与として、収入計上が必要になる可能性があります。
法人では、原則として時価相当額の収益を認識し、相手や目的に応じて、寄附金、交際費、広告宣伝費、役員給与、従業員給与、福利厚生費などを判定します。
消費税については、個人事業者の家事消費や法人から役員への贈与はみなし譲渡の対象になり得ますが、一般の知人への無償提供は、所得税・法人税と同じ扱いになるとは限りません。
無料提供を完全に記録しない運用は、税務調査で説明が難しくなるため避けるべきです。
要点
主な根拠
本記事は、所得税法、法人税法、消費税法、所得税基本通達を主な根拠として整理しています。
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Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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