資産管理会社は結局いくらから作るべき?節税で後悔しないための判断基準

「資産管理会社を作れば節税になるらしい」——そんな話を聞いて、自分にも当てはまるのか気になった方は多いのではないでしょうか。
周りの経営者や不動産オーナーが資産管理会社を作って節税していると聞くと、「うちもすぐ作るべきなのでは」と焦ってしまいますよね。
ただ、資産管理会社は誰にとっても得になる仕組みではなく、所得や資産の規模によっては維持コストの方が節税額を上回ってしまうこともあります。
この記事では、資産管理会社がなぜ節税につながるのか、その仕組みと、実際にどのくらいの所得・資産があれば検討する価値があるのかを整理していきます。

なぜ資産管理会社を作ると節税になるのか

資産管理会社とは、不動産や株式などの資産の管理・運用を目的として設立する会社のことです。
節税効果の源になっているのは、個人と法人の税率差になります。

個人の所得税は累進課税(所得が多いほど税率が上がる仕組み)で、所得税と住民税を合わせると最高で約55%もの税負担になります。
一方、法人税の実効税率(社会保険料などを含めた実質的な税負担率)はおおむね23%前後で、資本金1億円以下の中小法人であれば年800万円までの所得に軽減税率(15%)が適用されるケースもあります。
個人で高い税率を払い続けるより、資産の管理主体を法人に移すことで適用税率そのものを下げられる可能性がある、というのが資産管理会社が節税策として語られる理由です。

加えて、法人化すると経費として計上できる範囲が広がります。
役員報酬や生命保険料、社宅としての家賃、出張費や会議費など、個人では経費にしにくい支出も、業務との関連性が説明できれば損金(法人税の計算上、収入から差し引ける費用)にできる場合があります。

資産管理会社を作るべきかの判断基準

「では自分はいくらから検討すべきなのか」という点が一番気になるところだと思います。
専門家の間でよく挙げられる目安は、課税所得がおおむね800万円〜900万円を超えたあたりです。
この水準を超えると、個人の税率が法人の実効税率を上回りやすくなり、法人化のメリットが出やすくなるとされています。

ただし、これはあくまで税率だけを比較した場合の目安です。
会社の設立費用(株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約6万〜10万円)や、赤字でも毎年発生する法人住民税の均等割(年7万円程度)、税理士への顧問料といった維持コストを差し引くと、実質的にメリットが出るラインはもう少し高くなります。
より安全な基準として、課税所得1,000万円〜1,200万円程度を実質的な損益分岐点とみる見方もあります。
不動産や金融資産を中心に検討する場合は、所得額に加えて資産規模1億円前後を一つの目安とする専門家もいますので、所得と資産の両面から自分の状況を確認しておくと判断しやすくなります。

判断に迷う場合は、まず自分の課税所得がどのラインにあるかを把握することが出発点になります。
所得税を節税するには?控除の仕組みと今日からできる具体策で、自分の所得税がどう計算されているかを確認してから資産管理会社の検討に進むと、話が整理しやすくなります。

節税以外にも押さえておきたい活用の幅

資産管理会社の使い道は、税率差を利用した節税だけではありません。

  • 所得の分散:家族を役員に迎えて役員報酬を支給することで、世帯全体としての税負担を分散できます。
    会社員の方が「会社を作って節税できないか」を考える場合、いわゆるマイクロ法人(小規模な資産管理・所得分散目的の会社)としての活用も選択肢になります。
    詳しくはサラリーマンの節税に会社設立は有効?マイクロ法人のメリット・デメリットと注意点で解説しています。
  • 繰越控除の期間延長:赤字が出た場合の繰越控除(赤字を翌年以降の黒字と相殺できる制度)は、個人が3年であるのに対し、法人は9年〜10年程度まで認められています(年度によって幅があります)。
  • 相続対策としての活用:不動産は物理的に分割しにくい資産ですが、資産管理会社の株式にしておけば相続時の遺産分割がしやすくなり、相続争いの抑止にもつながるとされています。
    相続対策全体の考え方は相続税の節税、何から始める?今のうちにできる対策と落とし穴も参考になります。

役員報酬をどう設定するかで税負担が変わってくるため、役員報酬の税金はいくらかかる?決め方と損しないための考え方もあわせて確認しておくと、資産管理会社を作ったあとの運用がイメージしやすくなります。

つまずきやすいポイント・よくある誤解

資産管理会社の話は節税メリットばかりが強調されがちですが、見落としやすい注意点もあります。

  • 役員報酬は自由に変更できない:役員報酬は定款や株主総会の決議で定める必要があり、毎月の業績に応じて自由に増減させることはできません。
  • 小規模宅地等の特例が使えない:個人が自宅や事業用の土地を相続する場合に評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例(一定の要件を満たす土地の相続税評価額を軽減する制度)は、資産管理会社が所有する土地には適用できません。
  • 維持コストは赤字でも発生する:法人住民税の均等割は、その年の利益がゼロでも支払い義務があります。
    節税額より維持コストが上回っては本末転倒になってしまいます。
  • 原則として事業承継税制の対象外:資産管理会社は事業実態が乏しいとみなされやすく、非上場株式の事業承継税制(自社株の相続税・贈与税の納税を猶予する制度)の対象から外れるケースが一般的です。

「節税になるはず」という思い込みだけで進めると、設立後にコストばかりが目立ってしまうことがあるので、設立前に顧問税理士など専門家とシミュレーションしておくと安心です。

まとめ

資産管理会社は、個人と法人の税率差や経費範囲の違いを活かせる仕組みですが、効果が出るかどうかは所得・資産の規模と維持コストのバランス次第です。
まずは自分の課税所得がどのラインにあるかを確認し、専門家と一緒にシミュレーションしてから判断することをおすすめします。

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末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。