事務所を借りたときには、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、保証料など、まとまった初期費用が発生します。
このとき、「全部まとめて経費にしてよいのか」と迷うことがあります。
結論として、法人が事業用の事務所を借りた場合、敷金・礼金・仲介手数料は、すべて同じ処理にはなりません。
退去時に返ってくる敷金は、原則として経費ではなく資産です。返ってこない礼金は、原則として繰延資産として一定期間で経費化します。仲介手数料は、通常、支払った事業年度の経費として処理できます。
経営者
事務所を借りたのですが、敷金・礼金・仲介手数料は全部経費になりますか?
税理士
全部がその年、その期の経費になるわけではありません。
敷金、礼金、仲介手数料は、それぞれ性質が違うため、税務上の処理も分けて考える必要があります。
基本的には、退去時に返ってくる敷金は資産計上、返ってこない礼金は原則として繰延資産、仲介手数料は支払った期の経費という整理になります。
経営者
まず、敷金は経費にならないのですか?
税理士
退去時に返ってくる部分は、経費にはなりません。
敷金は、家賃や原状回復費などの担保として貸主に預けるお金です。返還される性質のものなので、支払った時点では費用ではなく、差入保証金や敷金などの資産として処理します。
たとえば、敷金60万円を支払った場合、その60万円が退去時に返ってくる契約であれば、支払った期の経費にはせず、資産として計上します。
経営者
では、礼金はどうなりますか?礼金は返ってこないですよね。
税理士
礼金のように、返ってこない支出は、原則として繰延資産になります。
法人税では、支出の効果が1年以上に及ぶ一定の費用を繰延資産として扱います。建物を借りるために支払う権利金や礼金なども、これに含まれます。
そのため、礼金は支払った期に全額経費とするのではなく、原則として一定期間で少しずつ経費化します。
通常の建物賃借に伴う礼金・権利金等は、原則として5年で償却します。
経営者
礼金は必ず5年で経費にしないといけないのですか?
税理士
原則は5年ですが、例外があります。
契約期間が5年未満で、契約更新時に再び権利金や礼金などの支払いが必要であることが明らかな場合は、その賃借期間で償却します。
また、契約ごとの礼金等の支出額が20万円未満であれば、少額の繰延資産として、支払った事業年度に全額損金とすることができます。
ここで注意すべきなのは、「20万円以下」ではなく「20万円未満」という点です。20万円ちょうどは、この少額特例の対象にはなりません。
経営者
たとえば、礼金が15万円なら一括で経費にできますか?
税理士
契約ごとの支出額が15万円であれば、20万円未満ですので、支出した事業年度に全額経費処理できる可能性があります。
一方、礼金が30万円であれば、20万円未満ではありません。その場合は、通常、繰延資産として計上し、原則5年で償却します。
税務上は、金額の判定を契約ごとに行う点も重要です。
経営者
仲介手数料はどうですか?これも礼金と同じように5年で償却ですか?
税理士
仲介手数料は、礼金とは扱いが異なります。
建物を借りる際の権利金等は繰延資産になりますが、建物賃借に際して支払った仲介手数料については、法人税基本通達で、支払った事業年度の損金に算入できるとされています。
したがって、通常の賃貸借仲介手数料であれば、支払手数料などとして支払った期に全額経費処理する整理になります。
経営者
敷金の中に「償却」や「敷引き」と書いてある場合はどうなりますか?
税理士
そこは注意が必要です。
「敷金」という名前でも、契約書に「退去時に20万円を償却する」「敷引き20万円」などと書かれている場合、その20万円は返ってこない部分です。
返ってくる部分と返ってこない部分は、分けて考える必要があります。
たとえば、敷金60万円で、そのうち20万円が退去時に償却される契約であれば、返ってくる40万円は敷金・差入保証金として資産計上します。
一方、返ってこない20万円については、建物を借りるための権利金等として、礼金と同じように繰延資産として検討します。20万円未満かどうか、償却期間は何年かを確認する必要があります。
経営者
消費税はどうなりますか?
税理士
消費税も分けて考えます。
返還される敷金や保証金は、預けているだけのお金なので、原則として消費税の課税対象にはなりません。
一方、返還されない礼金、権利金、保証金償却部分などは、事業用建物の賃借に伴う対価として、消費税の課税対象になることがあります。
仲介手数料も、不動産会社から受ける役務提供の対価ですので、通常は消費税の課税対象です。
仕入税額控除を受けるためには、法人の課税仕入れであることを説明できる帳簿と、インボイス等の保存が必要です。
経営者
具体例でいうと、どう処理すればよいですか?
税理士
たとえば、法人が事務所を借りるときに、敷金60万円、礼金15万円、仲介手数料11万円を支払ったとします。
この場合、一般的には次のように整理します。
敷金60万円は、退去時に返ってくる部分であれば、敷金や差入保証金として資産計上します。
礼金15万円は、返ってこない支出ですが、契約ごとの支出額が20万円未満であれば、支払った期に全額経費処理できる可能性があります。
仲介手数料11万円は、通常、支払手数料などとして支払った期に全額経費処理します。
一方、礼金が30万円であれば、20万円未満ではないため、原則として繰延資産として計上し、通常は5年で償却します。
経営者
契約書のどこを見ればよいですか?
税理士
まず、敷金、保証金、礼金、権利金、償却、敷引き、更新時の支払いの有無を確認してください。
名称だけで判断してはいけません。
「敷金」と書いてあっても、返ってこない部分があれば、その部分は単なる預け金ではありません。
また、礼金や権利金が20万円未満かどうか、契約期間が何年か、更新時に再度支払いが必要かどうかも確認します。
契約書、請求書、領収書、インボイスを揃えたうえで、返ってくる部分と返ってこない部分を分けることが重要です。
町田・相模原で事務所開設や法人成り後の経理に不安がある方へ
事務所を借りたときの初期費用は、金額が大きくなりやすく、税務処理を間違えると決算や消費税の計算にも影響します。
特に、起業直後や法人成り直後は、事務所契約、法人名義口座、クレジットカード、会計処理、消費税のインボイス保存などを一度に整える必要があります。
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要点
主な根拠
※本記事は、法人が事業用の事務所を賃借する場合の一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、契約書上の返還条件、敷引き・償却の有無、契約期間、更新時の支払い条件、金額、消費税区分、インボイスの保存状況などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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