海外不動産の減価償却、今からやっても節税にならない?改正後の仕組みと今できる対策

海外の中古マンションを買えば減価償却で大きく節税できる——数年前まではそう言われていました。
ところが改めて調べ直してみると、記事によって「もうできない」「今も使える」と結論が割れていて、どちらを信じればいいのか分からなくなった方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、個人が海外の中古建物を使って給与所得などと損益通算する節税は、2021年分の所得税からできなくなりました
ただし「海外不動産は節税に一切使えない」というのも正確ではありません。
何が変わって、何がまだ使えるのかを整理します。

なぜ「できなくなった」と言われるのか

原因は2020年度の税制改正です。
「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」が新設され、個人が海外の中古建物から不動産所得の赤字を出しても、そのうち簡便法で計算した減価償却費に相当する部分は「生じなかったもの」として扱われることになりました。
適用は令和3年(2021年)分の所得税からで、2022年の確定申告分から実際に効いています。

背景にあるのは、日本と海外の建物の評価の違いです。
たとえばアメリカでは土地と建物の価値の比率がおおむね2対8で建物の割合が高いのに対し、日本は逆に8対2で土地の割合が高いとされます。
さらに中古資産には「簡便法」という耐用年数を短縮する計算方法が使え、実態よりずっと短い期間で減価償却できてしまうケースがありました。
その結果、賃貸収入を上回る減価償却費を計上し、その赤字を給与所得などにぶつけて所得税を圧縮する——というのが従来の節税スキームです。
会計検査院が「中古の海外不動産に日本の簡便法を適用するのは合理的でない」と指摘したことが、改正の直接のきっかけになりました

中古物件の減価償却の考え方自体は国内・海外で共通ですが、海外の中古物件の損失だけがこの特例で「他の所得と通算できない」扱いになった、という点が最大のつまずきどころです。

今からできる対策の考え方

すでに海外不動産を持っている方、これから検討している方は、次の3つの選択肢で整理すると分かりやすくなります。

1. 海外不動産同士での通算は残っている
給与所得など他の所得との通算はできなくなりましたが、複数の海外不動産を持っている場合、海外不動産の所得内での黒字・赤字の相殺は引き続き可能です。
1棟の赤字をもう1棟の黒字で吸収する使い方は今も成立します。

2. 法人での保有は対象外
この特例はあくまで個人の所得税に対する規制で、法人が保有する海外中古建物には適用されません。
法人であれば簡便法による減価償却も、その他の経費計上も従来どおり行えます。
ただし、減価償却で圧縮した課税所得は、将来売却したときの譲渡益として跳ね返ってくる面があります。
減価償却時と売却時の税率差がなければ、節税というより納税のタイミングを先送りしているだけ、ということも起こり得ます。
減価償却は節税になるかで触れている考え方と基本的には同じです。

3. 長期保有してから売却する
個人で保有していて通算できなかった損失がある場合でも、5年を超えて保有してから売却すると、通算から除外された金額が譲渡所得の計算上の取得費に反映され、売却時の税負担が軽くなる仕組みがあります。
一般的な不動産の譲渡所得と同じく、5年超の長期保有になると税率が下がる仕組みが働くため、入口の節税だけでなく出口までを見て判断することが大事です。

誤解しやすいポイント

  • 「経費が一切使えなくなった」わけではありません
    対象になるのは簡便法で計算した減価償却費に相当する部分だけで、管理費や修繕費といった実費の経費計上は従来どおり可能です。
  • 「前から持っている物件なら対象外」ではありません
    特例は物件の取得時期ではなく、損失が生じる年分で判定されます。
    何年も前に購入した物件でも、2021年分以降に生じた損失であれば特例の対象になります。
  • 対象は「中古」の建物です。
    特例の名称のとおり国外の中古建物が対象で、新築物件とは前提が異なります。
    ご自身の物件がどちらに当たるかは、契約書や取得時の資料で確認しておく必要があります。

不動産の節税を考えるときは、海外・国内を問わず「その節税は課税を減らしているのか、先送りしているだけなのか」を分けて考えると判断しやすくなります。

まとめ

海外不動産の減価償却による節税は、個人については2021年分以降、給与所得などとの損益通算に使えなくなりました。
一方で、海外不動産同士の通算・法人での保有・長期保有後の売却という選択肢は残っています。
すでに投資している方は、今の制度でどこまで使えるかを一度整理してみることをおすすめします。

Author Profile

末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。