開業資金はいくらかかるのか?
日本政策金融公庫が、融資先を対象に行った最新の調査によれば、
- 開業資金が250万円未満の新規開業企業→16.7%
- 開業資金が250万円以上の新規開業企業→83.3%
となっています。
しかしながら、たとえばコンサルティング業等のように、ほとんど設備資金を要しない事業もあれば、飲食業等のように、大規模な設備資金を要する事業もありますので、「開業資金は〇〇円あればよい」と一概に決めることはできません。
開業資金が不足するとどうなるのか?
開業資金は、
- 開業までに必要な資金
- 事業が軌道に乗るまでに必要な資金
に分けることができます。
開業までに必要な資金が不足している場合
開業までに必要な資金としては、会社設立費用(法人の場合。個人事業主には不要)、商品の仕入れ費用、オフィスまたは店舗の契約費用、人材採用費、ホームページの作成費用等が挙げられます。
これらの資金が不足すると、そもそも開業ができなかったり、利益が思うように確保できず、事業規模の拡大が大幅に遅れるという事態が生じます。
事業が軌道に乗るまでに必要な資金が不足している場合
事業が軌道に乗るまでに必要な資金としては、商品の仕入れ費用、オフィスまたは店舗の賃料、人件費、水道光熱費、通信費等が挙げられます。
開業直後は、どの会社も思うように売上が上がらず、利益を確保できない時期があります。
この時期を、死の谷(デスバレー)と呼びます。
これらの資金が不足すると、死の谷(デスバレー)を乗り越えられずに開業後数年足らずで倒産するという事態が生じます。
会社を絶対に潰さない開業資金の金額はどのように計算すればよいのか?
開業資金のうち、開業前に必要な資金の金額は、請求書や見積書等から比較的簡単に計算できます。
問題は、事業が軌道に乗るまでに必要な資金の金額です。
事業が軌道に乗るまでに必要な資金の金額の計算には、開業前に必要な資金の金額の計算と異なり、資金繰りの予測が必要となります。
事業が軌道に乗るまでに必要な資金の金額を計算するには、資金繰り表(資金繰り表のExcelフォーマットが開きます)の作成が有効です。
以降を参考に、ダウンロードした資金繰り表を使いながら、会社を絶対に潰さない開業資金の金額を計算してください。
会社を絶対に潰さない開業資金の計算手順
①開業前に必要な資金を記載する
まず、請求書や見積書等から算出した、パソコンの取得費用やオフィスの契約費用といった開業前に必要な資金の額を、開業月の列(上図であれば4月)に記載します。
②事業が軌道に乗るまでに要する期間を予測する
次に、いつ頃、事業が軌道に乗るかを予測します。
事業が軌道に乗るまでに要する期間は、認知獲得までに要する期間や顧客獲得までに要する期間等を念頭に、保守的(長め)に予測しましょう。
③事業が軌道に乗る月までの収入額を0とする
次に、②で予測した軌道に乗るまでの各月の売上代金(現金売上行、売掛金回収行)を記載していきます。
なお、資金繰り表は、商品やサービスを販売したタイミングではなく、実際の入金のタイミングで記載を行います。
事業が軌道に乗る前にもいくらかの収入があることを見込んで記載をしても構いませんが、開業資金は、あくまでも「会社を絶対に潰さない」金額を準備する必要がありますので、最悪のケースを想定して収入額は0にすることをおすすめします。
事業が軌道に乗るまでの収入額が0でも資金繰りが回るような開業資金を準備して開業に臨めば、倒産は防ぐことができるのです。
④事業が軌道に乗る月以降の入金額を記載する
次に、事業が軌道に乗る月以降の各月の売上代金を記載します。
ここまでで、一年分の売上代金の記載が完了します。
一般に、事業が軌道に乗る前後で急激に売上が伸びることはありませんので、徐々に売上が上がっていくことを想定して保守的に記載しましょう。
⑤諸経費、設備投資、借入返済額を記入する
次に、①で記載した必要資金以外の1年分の諸経費、設備投資、借入返済額を記入します。
開業直後は、不測の支出が嵩むことが通常ですので、思いつく限りの金額を記載しましょう。
⑥各月の翌月繰越現預金がプラスになる金額を、事業開始月の繰越現預金欄に記載する
最後に、各月の最下部にある「翌月繰越現預金」がプラスになるような金額を、事業開始月(上図であれば4月)の繰越現預金欄に記載します。
各月の翌月繰越現預金がマイナスになるということは、会社が資金ショートを起こして倒産することを意味します。
つまり、各月の翌月繰越現預金がマイナスにならないよう事業開始月(上図であれば4月)の繰越現預金欄に記載した金額が、会社を絶対に潰さない開業資金の金額であるということができます。
知人や親族から開業資金の援助を受けることには限界がある
開業資金が不足している場合には、不足分を知人や親族から調達するという方法があります。
この方法は、ごく一般的な方法ではありますが、調達可能な資金が小さくなりがちであるという欠点があるため、結局のところ、さらに他の方法で資金調達を行う必要が生じるケースが多いです。
開業資金の不足額は創業融資で調達する
こうした事情から、開業資金が不足している多くの起業家は、創業融資により不足額を調達しています。
創業融資とは、開業・起業の促進を目的として、銀行が起業家を対象に行う融資をいいます。
創業融資には、
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度
- 地方自治体が扱う制度融資
とがあります。
創業融資は、無担保・無保証人で借りることができたり、地方自治体から利子補給(=利息の一部または全部を地方自治体が負担してくれる)を受けられたり、通常の融資にはない特典のある融資です。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
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