作りかけの商品や未完成の工事が決算時点で残っている場合、材料費、外注費、人件費などをすべてその期の経費にできるとは限りません。
法人税法上、棚卸資産には商品や製品だけでなく、半製品、仕掛品も含まれます。また、法人税法施行令では、仕掛品に「半成工事」が含まれることも明示されています。
そのため、製造途中の商品だけでなく、完成・引渡し前の請負工事についても、税務上は棚卸資産として整理すべき場合があります。
経営者
作りかけの商品や未完成の工事も、在庫として計上しなければいけませんか?
税理士
はい。決算時点で作りかけの商品や未完成の工事が残っている場合、原則として、その完成までに投入した原価を仕掛品や未成工事支出金などの資産として計上する必要があります。
まだ売上に対応していない原価を、当期の経費として全部落としてしまうと、利益が過少に計算される可能性があります。
経営者
在庫というと、完成した商品だけのイメージでした。
作りかけでも在庫になるのですか?
税理士
税務上の棚卸資産は、完成した商品や製品だけではありません。
法人税法では、棚卸資産に商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他棚卸しをすべき資産が含まれます。
さらに法人税法施行令10条では、棚卸資産の範囲として、半製品、仕掛品が挙げられ、仕掛品には半成工事が含まれるとされています。
つまり、製造途中の商品や、完成前の工事も、税務上の棚卸資産になり得ます。
経営者
例えば、まだ完成していない商品に材料費や外注費がかかっている場合はどうなりますか?
税理士
その商品が決算時点でまだ完成・販売されていない場合、基本的には、その商品に対応する原価を仕掛品として翌期へ繰り越します。
例えば、決算日時点で未完成の商品について、材料費100万円、直接人件費40万円、外注加工費30万円がかかっているとします。
この場合、合計170万円をその期の売上原価として処理するのではなく、仕掛品として資産計上するのが基本です。
そして、その商品が完成して販売された時点で、売上に対応する原価として費用化します。
経営者
人件費も仕掛品に入るのですか?
給与だから、そのまま経費になると思っていました。
税理士
そこは誤解が多いところです。
自己で製造した棚卸資産の取得価額には、原材料費だけでなく、労務費、経費、販売等の用に供するため直接要した費用も含まれます。
したがって、製造スタッフが未完成の商品に直接作業している場合、その作業に対応する人件費は、単に給与だから全額当期経費という整理にはなりません。
期末に残っている仕掛品に対応する部分は、製造原価として仕掛品に含めることが問題になります。
経営者
建設業の未完成工事も同じですか?
税理士
基本的な考え方は同じです。
完成・引渡し前の工事について発生した材料費、労務費、外注費、経費などは、原則として未成工事支出金に集計します。
そして、工事が完成し、売上を計上する時点で、完成工事原価へ振り替えます。
例えば、請負金額1,000万円の工事について、決算日までに工事原価400万円が発生していて、決算時点では未完成・未引渡しだったとします。
完成基準で売上をまだ計上しない処理であれば、原則として400万円を未成工事支出金として翌期へ繰り越します。
経営者
前受金や着手金をもらっている場合はどうなりますか?
税理士
前受金をもらったかどうかと、未成工事支出金を計上するかどうかは別問題です。
着手金や前受金を受け取っていても、それだけで工事が完成したことにはなりません。
売上をいつ計上するかは、契約内容、完成・引渡し、検収条件、履行義務の充足状況などを確認して判断します。
一方、決算時点までに発生した工事原価については、売上に対応する時期まで未成工事支出金として整理する必要があります。
経営者
工事の進捗に応じて売上を計上している場合も、全部未成工事支出金に残しますか?
税理士
いいえ。その場合は処理が変わります。
工事や役務提供について、一定期間にわたり履行義務が充足される取引では、進捗度に応じて収益を認識する場合があります。
その場合、当期に計上した収益に対応する原価は、当期の原価として処理します。
つまり、未完成だから発生原価をすべて未成工事支出金に残す、というわけではありません。
進捗に応じて売上を計上している場合は、その売上に対応する原価と、まだ翌期以降に対応する原価を分けて計算する必要があります。
経営者
小さい会社でも、製造間接費まで厳密に配賦しなければいけませんか?
税理士
必ずしも、すべての間接経費を細かく厳密に配賦しなければならないとは限りません。
法人税基本通達では、小規模法人などで製造間接費を製品、半製品、仕掛品に配賦することが困難な場合の簡便的な取扱いも示されています。
ただし、これは材料費、直接労務費、外注費などの主要な直接原価まで無視してよいという意味ではありません。
期末に未完成の商品や工事がある場合、少なくとも案件別・製品別に主要な原価を把握することが重要です。
経営者
消費税はどうなりますか?
未成工事支出金にしているなら、仕入税額控除も完成時まで待つのですか?
税理士
法人税や会計上の未成工事支出金と、消費税の仕入税額控除の時期は、必ずしも同じではありません。
材料の引渡しや外注先の役務提供が完了していれば、原則として、その課税期間に仕入税額控除を行います。
国税庁も、未成工事支出金として経理している場合の仕入税額控除の時期について説明しています。
ただし、一定の継続処理による例外もありますので、消費税については法人税の在庫処理と分けて確認する必要があります。
経営者
決算では、何を確認すればよいですか?
税理士
まず、決算日時点で未完成の商品、製造途中の製品、施工途中の工事、制作途中の案件が残っていないかを確認してください。
次に、案件ごとに材料費、外注費、直接人件費、その他直接経費を集計します。
完成・販売済み、完成・引渡し済み、検収済みのものと、未完成・未引渡しのものを分けます。
売上を完成時に計上しているのか、進捗に応じて計上しているのかも確認します。
そのうえで、当期の売上に対応する原価は当期の原価とし、まだ売上に対応していない原価は仕掛品や未成工事支出金として翌期へ繰り越します。
町田・相模原で製造業・建設業の決算整理に不安がある方へ
製造業、建設業、システム開発業、制作業などでは、決算時点で作業途中の案件が残ることがあります。
このとき、材料費、外注費、人件費をすべて当期の経費として処理してしまうと、期末の仕掛品や未成工事支出金が漏れ、利益が過少に計算される可能性があります。
一方で、すべてを機械的に資産計上すればよいわけでもありません。完成・引渡し、検収条件、進捗に応じた収益認識、前受金、消費税の仕入税額控除の時期などを整理する必要があります。
町田・相模原で、製造業・建設業・制作業の決算整理、仕掛品、未成工事支出金の計算に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、事業内容、契約内容、完成・引渡し・検収の状況、収益認識方法、原価集計の方法、消費税の処理方法などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




