個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族に給与を支払い、その給与を事業所得などの必要経費にしたい場合があります。
ただし、家族に実際に給与を払えば、自動的に経費になるわけではありません。
青色申告者が、家族への給与を「青色事業専従者給与」として必要経費にするためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出する必要があります。
提出期限は、原則として、その給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。
ただし、1月16日以後に新しく開業した場合や、年の途中から新たに家族が専従者になった場合は、開業日または専従者となった日から2か月以内が期限になります。
個人事業主
個人事業主です。
妻に仕事を手伝ってもらうことになりました。
給料を払って経費にしたいのですが、いつまでに届出が必要ですか?
税理士
青色事業専従者給与として経費にしたい場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
提出期限は、原則として、その年の3月15日までです。
ただし、1月16日以後に新しく開業した場合は、開業日から2か月以内です。
また、すでに事業をしていて、年の途中から新たに家族が専従者になった場合も、専従者となった日から2か月以内が期限になります。
個人事業主
たとえば、8月1日に開業して、その日から妻に手伝ってもらう場合はどうなりますか?
税理士
8月1日に開業して、その日から奥様が事業に専従する場合は、原則として10月1日までに届出が必要です。
この場合は、1月16日以後に新たに事業を開始したケースに該当するため、3月15日ではなく、開業日から2か月以内という期限で判断します。
国税庁の「青色事業専従者給与に関する届出手続」でも、原則3月15日、1月16日以後の開業または新たに専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内と案内されています。
個人事業主
開業届を出していれば、それで足りますか?
税理士
足りません。
開業届、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書は、それぞれ別の手続です。
開業届を出していても、青色申告承認申請書を提出していなければ青色申告者になれません。
また、青色申告承認申請書を提出していても、青色事業専従者給与に関する届出書を提出していなければ、家族への給与を青色事業専従者給与として必要経費にすることはできません。
個人事業主
つまり、家族に給料を払う場合は、青色申告の届出とは別に、専従者給与の届出も必要ということですね。
税理士
その通りです。
たとえば8月1日に開業した場合は、青色申告承認申請書についても、原則として開業日から2か月以内に提出する必要があります。
そして、家族への給与を青色事業専従者給与として経費にしたい場合は、青色事業専従者給与に関する届出書も、原則として同じく開業日から2か月以内に提出します。
8月1日開業であれば、10月1日までに両方を確認する必要があります。
個人事業主
家族であれば、誰に払っても経費になりますか?
税理士
いいえ。家族であれば誰でもよいわけではありません。
青色事業専従者給与の対象になるのは、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年12月31日時点で15歳以上であり、原則として専らその事業に従事している人です。
また、届出書に記載した方法や金額の範囲内で支払われていること、実際の仕事内容や勤務時間に照らして給与額が相当であることも必要です。
家族だからという理由だけで、勤務実態のない給与や過大な給与を経費にすることはできません。
個人事業主
「専ら事業に従事」とは、どのくらい働いていればよいのですか?
税理士
原則として、その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事しているかどうかで判断します。
ただし、年の途中で開業した場合、年の途中で会社を退職して家族の事業に従事し始めた場合、婚姻などで年の途中から従事することになった場合などは、少し判定が変わります。
そのような場合には、事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間、専ら従事していれば要件を満たす場合があります。
したがって、8月から専従したから6か月を超えていないので絶対に対象外、という単純な話ではありません。
個人事業主
給与額はいくらにしてもよいのですか?
税理士
いくらでもよいわけではありません。
青色事業専従者給与として必要経費になるのは、労務の対価として相当であると認められる金額に限られます。
勤務日数、勤務時間、仕事内容、事業の規模、売上や利益、同種同規模の事業で同じような仕事をする人の給与水準などを踏まえて、合理的な金額である必要があります。
たとえば、実際には月に数時間しか手伝っていないのに、毎月30万円を支払うような場合は、過大と判断されるリスクがあります。
個人事業主
すでに届出を出している場合で、後から別の家族を追加したり、給与額を変えたりする場合はどうなりますか?
税理士
新しい専従者を追加する場合や、届出済みの給与額を大きく変更する場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出します。
国税庁の手続案内では、変更届出書は「遅滞なく」提出する取扱いとされています。
実務上は、後から慌てて説明するよりも、変更する前または変更が決まった時点で、早めに提出しておく方が安全です。
個人事業主
妻に専従者給与を払うと、配偶者控除はどうなりますか?
税理士
青色事業専従者として給与の支払いを受ける家族は、原則として、事業主の同一生計配偶者や扶養親族として扱うことができません。
つまり、専従者給与を払えば経費が増える一方で、配偶者控除や扶養控除が使えなくなる可能性があります。
そのため、給与額を決めるときは、事業主側の所得税だけでなく、家族側の所得税、住民税、社会保険料なども含めて、世帯全体で比較することが重要です。
個人事業主
では、家族に給料を払い始める前に、何を確認すればよいですか?
税理士
まず、開業日と、ご家族が実際に事業に従事し始める日を確認してください。
次に、青色申告承認申請書を提出済みか、青色事業専従者給与に関する届出書を提出済みかを確認します。
そのうえで、ご家族の続柄、生計を一にしているか、年齢、勤務日数、勤務時間、職務内容、給与予定額を整理します。
届出期限を過ぎると、その年の給与を必要経費にできない可能性があります。家族へ給料を払い始める前に、届出期限と届出内容を確認しておくことが重要です。
町田・相模原で、家族への給与や青色申告の届出に不安がある方へ
個人事業主が家族に給与を支払う場合、「家族だから経費にできる」と考えてしまうと危険です。
青色事業専従者給与は、届出期限、専従要件、給与額の相当性、扶養控除や配偶者控除への影響まで確認する必要があります。
特に、開業直後は、開業届、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書の区別が分かりにくく、期限を過ぎてしまうことがあります。
町田・相模原で、個人事業主の開業、青色申告、家族への給与、法人成りまで見据えた税務相談をしたい方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、開業日、青色申告承認申請の有無、家族の勤務実態、給与額、他の勤務先の有無、世帯全体の所得状況などによって異なります。
Author Profile
-
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。




