個人事業主の赤字は前年に繰り戻せる?所得税の還付条件と計算方法

所得税の繰り戻し還付

個人事業主として青色申告をしている方が、前年は黒字だったものの、今年は赤字になってしまった場合、前年に納めた所得税は戻ってくるのでしょうか。

実は、青色申告者には、今年発生した税務上の赤字を前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けられる「純損失の繰戻し還付」という制度があります。

ただし、赤字になれば自動的に還付されるわけではなく、前年・今年の青色申告や、専用の還付請求書の提出など、一定の要件があります。

また、赤字を翌年以後3年間に繰り越す制度もあるため、繰戻しと繰越しのどちらが有利かを検討することも重要です。

今回は、純損失の繰戻し還付の仕組み、適用要件、還付額の計算方法、必要な手続き、3年間の繰越控除との違いまで解説します。

今年赤字になったら前年の所得税が戻ってくる?

純損失の繰戻し還付を受けるための5つの要件

前年が白色申告だった場合は?

事業が赤字でも「純損失」がなければ繰戻しできない?

事業所得が400万円の赤字でも、純損失は300万円になる例

純損失の繰戻し還付額はどうやって計算する?

計算例:前年の課税所得500万円、今年の純損失300万円

次の条件を想定します。

  • 2025年の課税所得:500万円
  • 2025年の算出所得税額:572,500円
  • 2026年の純損失:300万円
  • 繰戻しに使用する純損失:300万円
  • 前年に税額控除等はなく、還付上限による制限もないものとする

まず、2025年の所得税を計算します。

500万円×20%-427,500円=572,500円

次に、2026年の純損失300万円を繰り戻します。

500万円-300万円=200万円

繰戻し後の課税所得200万円について、所得税を計算します。

200万円×10%-97,500円=102,500円

したがって、還付額は次のとおりです。

572,500円-102,500円=470,000円

項目 繰戻し前 繰戻し後
課税所得 500万円 200万円
適用税率 20% 10%
速算控除額 427,500円 97,500円
算出所得税額 572,500円 102,500円
繰戻し還付額 470,000円

※計算例は総合課税の所得のみを対象とし、所得税の速算表に基づいて計算しています。税額控除等による制限はないものとし、復興特別所得税および住民税は含めていません。

住宅ローン控除などの税額控除があると還付額が減る?

純損失の繰戻し還付を受けるための手続きは?

還付請求書はどこから入手できる?

2026年分の繰戻し還付の提出期限は2027年3月15日

赤字を翌年以後3年間に繰り越すこともできる?

繰戻し還付と繰越控除の比較

比較項目 繰戻し還付 繰越控除
対象期間 原則として前年1年間 翌年以後3年間
主な効果 前年の所得税の還付 将来の所得から損失を控除
前年の青色申告 必要 原則として不要
損失発生年の青色申告 原則として期限内提出が必要 必要
専用の還付請求書 必要 不要
将来の継続申告 繰戻しだけなら不要 必要
主な注意点 前年の還付可能税額が上限 将来の所得が少ないと控除しきれない場合がある

純損失の一部だけを繰り戻し、残額を繰り越すこともできる?

一部繰戻しと全額繰戻しでは還付額がどう変わる?

項目 300万円繰戻し 400万円繰戻し
前年の課税所得 500万円 500万円
繰戻し額 300万円 400万円
繰戻し後の課税所得 200万円 100万円
還付額 470,000円 522,500円
翌年以後への繰越残額 100万円 0円

※税額控除等による制限がないものとした所得税の計算例です。復興特別所得税、住民税は含めません。

繰戻し還付と繰越控除はどちらが有利?

純損失の繰戻しで住民税や復興特別所得税も戻る?

廃業する場合は純損失の繰戻しに特例がある?

まとめ:青色申告の赤字は繰戻し還付と繰越控除を比較しよう

町田・相模原で個人事業主の赤字申告や所得税の還付にお困りの方へ

個人事業主の確定申告では、事業が赤字になった場合でも、その赤字をどのように申告するかによって税負担が変わることがあります。

特に、純損失の繰戻し還付と繰越控除では、適用要件や提出期限、節税効果が異なります。前年の申告状況や今後の事業見通しを踏まえて判断することが重要です。

町田・相模原で、個人事業主の赤字申告、青色申告、純損失の繰戻し還付、損益通算、繰越控除などにお困りの方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。

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要点

  • 青色申告者は、所定の要件を満たせば、今年の純損失を前年に繰り戻して所得税の還付を受けられる。
  • 繰戻し還付の対象は、事業所得の赤字そのものではなく、原則として損益通算後に残った純損失。
  • 前年分についても青色申告書を提出していることが必要。
  • 今年分の青色申告書を期限内に提出し、専用の還付請求書を同時に提出する必要がある。
  • 2026年分の通常の繰戻し還付の提出期限は、原則として2027年3月15日(月)。
  • 還付額は前年の所得税額を再計算して求める。税額控除等による還付上限がある。
  • 純損失は前年への繰戻しのほか、原則として翌年以後3年間の繰越控除も可能。
  • 純損失の一部を繰り戻し、残額を翌年以後に繰り越すこともできる。
  • 繰戻しに使用した損失を翌年以後に再度控除することはできない。
  • 前年と将来の税率、資金繰り、今後の利益見通しを比較して有利な方法を選択することが重要。

主な根拠

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※本記事は2026年10月21日時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。実際の還付額、繰戻し・繰越しの適用可否は、前年の申告内容、税額控除、損益通算の対象となる所得、純損失の内訳、申告期限等によって異なります。災害損失や事業の全部譲渡・廃止等がある場合には、別途特例の確認が必要です。

Author Profile

末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。