「購入だと減価償却で何年もかかりますが、リースなら毎月のリース料をそのまま全額経費にできます」
カーリースの営業担当者から、このような説明を受けることがあります。
しかし、税務上は、契約の名称が「リース」であるだけで全額経費になるわけではありません。特に、事業用の車を週末に私用している場合は、個人事業と法人とで異なる問題が生じます。
経営者
カーリースの営業マンから、「購入だと減価償却で何年もかかりますが、リースなら毎月のリース料をそのまま全額経費にできますよ」と言われて、ベンツを契約しました。
平日は仕事で使っていますが、週末は家族との外出にも使っています。リース契約なら、税務調査でも全額経費で問題ありませんか?
税理士
いいえ。週末に私用している以上、リース料の全額が無条件に認められるとはいえません。
「購入なら減価償却、リースなら毎月全額経費」という説明は、税務上は正確ではありません。
個人事業では、事業に使用した部分だけが必要経費になります。法人では、役員や従業員が私用した部分について、会社から個人への経済的利益、つまり給与と認定される可能性があります。
経営者
リース料は賃借料なのですから、毎月そのまま経費にできるのではないですか?
税理士
契約内容によります。
税務上の「リース取引」に該当する契約は、形式上はリースでも、リース資産の引渡し時に売買があったものとして処理します。
その場合、リース資産とリース債務を計上し、所有権移転外リース取引であれば、原則としてリース期間定額法により償却します。
したがって、「リース契約なら減価償却が不要で、支払額をすべて賃借料にできる」とは限りません。
経営者
個人事業主の場合は、どのように処理すればよいですか?
税理士
リース料、保険料、駐車場代、自動車税、修理代などのうち、事業に必要な部分だけを必要経費にします。
業務と私用の両方に使う車は家事関連費に当たるため、事業使用部分を明確に区分できることが必要です。
一般的には、年間の業務走行距離を年間総走行距離で割って、事業使用割合を求める方法が説明しやすいでしょう。
経営者
平日は仕事、土日は私用なので、5日対2日で按分すればよいですか?
税理士
必ずしも日数按分が適切とは限りません。
平日に長距離の私用をすることもあれば、土日に取引先を訪問することもあります。日数だけでは、実際の利用状況を正確に反映できないことがあります。
日付、出発地、目的地、訪問先、業務目的、走行距離を記録し、ETC明細、給油記録、カレンダー、訪問履歴などと対応させる方法が望ましいです。
経営者
ベンツのような高級車だと、それだけで経費を否認されますか?
税理士
ベンツであることだけを理由に、直ちに経費を否認されるわけではありません。
重要なのは、事業上必要な車なのか、実際にどの程度業務で使用したのか、その利用状況を客観的に説明できるかです。
ただし、高額な車両で私用実態もある場合、事業上の必要性や使用割合を詳しく確認される可能性は高くなります。
経営者
実際に、ベンツの自動車費用が否認された裁決例はありますか?
税理士
あります。
平成30年2月1日裁決では、不動産貸付業を営む個人が、メルセデス・ベンツなどに関する自動車税、保険料、修繕費、ガソリン代、減価償却費等を必要経費に計上していました。
しかし、本人が示した使用回数や走行距離は概算であり、実際の対象期間や対象車両の記録に基づくものではありませんでした。
そのため、業務上必要であった部分が明らかでないとして、自動車関係費の必要経費算入は認められませんでした。
経営者
では、この裁決では「ベンツだから否認された」ということですか?
税理士
そうではありません。
この裁決の重要な点は、車種そのものよりも、対象期間と対象車両に対応する具体的な運行記録がなかったことです。
税務調査を意識して後から概算表を作るのではなく、日々の運行記録、ETC明細、訪問予定、給油記録などを継続して残しておく必要があります。
経営者
法人名義でリースしていれば、会社の車なので全額経費にできますか?
税理士
法人の場合は、個人事業のように単純に家事按分する問題ではありません。
役員や従業員が会社の車を私用し、その私用相当額を本人が負担していない場合は、会社から個人への経済的利益、つまり給与と認定される可能性があります。
役員の場合は、給与課税だけでなく、法人税法上の役員給与の損金不算入や、会社側の源泉所得税の問題も生じます。
経営者
法人では、どのような対応をすればよいですか?
税理士
まず、業務利用と私用利用を区分できる運行記録を残します。
そのうえで、私用相当額を役員や従業員から合理的に徴収する方法を検討します。
私用分を徴収しない場合は、経済的利益として給与課税や源泉徴収が必要か、役員給与として会社の損金に算入できるかを確認しなければなりません。
経営者
消費税も、リース料の全額を仕入税額控除できますか?
税理士
消費税も別途確認が必要です。
個人事業で私用部分がある場合、仕入税額控除の対象となるのは、原則として事業用部分です。
また、税務上のリース取引に該当するか、通常の賃貸借として扱うかによって、消費税の処理時期も異なることがあります。
法人の場合も、役員等の私用実態や契約内容を含めて処理を検討します。
経営者
では、いま何を確認すればよいですか?
税理士
まず、リース契約書を確認してください。
中途解約条件、残価保証、買取オプション、契約終了時の所有権移転、リース料に含まれる保険料やメンテナンス料などを確認し、税務上のリース区分を判断します。
次に、日付、目的地、訪問先、業務目的、走行距離を記録し、ETC明細や予定表と対応させます。
法人契約で私用している場合は、私用相当額の徴収または給与課税の処理も検討してください。
営業担当者の説明は税務署を拘束しません。契約の名称ではなく、契約内容と実際の利用状況に基づいて処理する必要があります。
要点
主な根拠
※本記事は一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、契約内容、使用実態、役員等からの徴収状況、消費税の課税方式などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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