「ドローンを買うと節税になる」——取引先や知人からそんな話を聞いて、検索窓に「ドローン ネット 節税」と打ち込んだ方も多いのではないでしょうか。
ニュースで大きく報じられた「ドローンネット」という会社の破綻と結びつけて、不安になっている経営者・個人事業主の方もいらっしゃると思います。
今回は、このドローン節税がどんな仕組みで、なぜ問題になったのかを整理し、同じような話を持ちかけられたときにどう見極めればいいかをお伝えします。
ドローン節税、なぜここまで広がったのか
ドローン節税の土台になっていたのは、「少額減価償却資産の特例」という制度です。
中小企業や個人事業主は、取得価額が一定額(10万円・20万円・30万円のいずれか)未満の資産を買った場合、通常の減価償却(数年かけて経費にする方法)を使わず、購入した年にまとめて経費計上できるという仕組みがありました。
ドローンは1台あたりの価格が10万円を切るものも多く、この特例と相性が良かったのです。
決算期が近づき「今期は利益が出そうだから、何か節税できないか」と考えた経営者が、複数台のドローンをまとめて購入。
全額をその年の経費にして利益を圧縮し、購入したドローンは業者に貸し出してレンタル料という形で少しずつ回収する——これが典型的なスキームでした。
実際には1,000万円の投資に対して年間約200万円分の税金を先送りしつつ、レンタル料として約30万円のリターンが得られると謳われ、多くのオーナー経営者が飛びついたと言われています。
ただしこれは税金がなくなるわけではなく、あくまで「支払う時期を後ろにずらす」課税の繰り延べにすぎません。
何が問題になったのか
問題は大きく2つの段階で表面化しました。
1つ目は、2022年(令和4年)度の税制改正です。
これにより、貸付(レンタル)目的で取得した資産は、取得価額にかかわらず少額減価償却資産の特例から除外されることになりました。
ドローンだけでなく、LEDや建設用足場など、同じように「小口購入→貸付」で節税していた商品もまとめて対象となり、2022年4月1日以降に取得した貸付用資産は、通常の耐用年数に応じて減価償却する必要があると定められています。
つまり「買ってすぐ全額経費」という前提そのものが崩れました。
2つ目は、個別の会社に対する税務調査です。
「ドローンネット」という会社は、この特例を使った節税商品を小口で販売し急成長しましたが、2025年の税務調査で多額の所得隠しが指摘され、経営破綻に至りました。
税理士の見解では、争点になったのは制度の是非そのものではなく「実質所得者課税の原則」、つまり形式上は売買契約であっても実態が伴っていたかどうかだったとされています。
具体的には、購入したはずのドローンが個体として識別・管理されていたか、投資家自身が事業のリスクをコントロールできる状態だったか、稼働状況が把握できていたかといった点が問われました。
形式だけ整えて実態が「単なる出資」に近ければ、経費計上の前提となる「事業の用に供した」という要件を満たさず、否認される可能性が高くなります。
同じような話を持ちかけられたときの確認手順
もし今、似たような節税商品を勧められているなら、次の順番で確認してみてください。
- 貸付・レンタル目的かどうかを確認する 資産を人に貸す前提の購入であれば、2022年度以降は少額減価償却資産の特例が使えません。
「全額経費になる」という説明自体が古い制度を前提にしていないか、まず疑ってみましょう。 - 自分で資産を管理・運用できるかを確認する 購入した資産がどこにあり、誰が使っていて、いくら稼働しているのか、自分で把握・説明できる状態かどうかは重要な判断材料です。
説明を求めても曖昧な返答しか返ってこない場合は要注意です。 - 顧問税理士に契約書を見せて相談する 節税スキームの営業担当者は税務のプロではないことが多く、否認リスクの説明が不十分なまま契約を勧めてくるケースもあります。
契約前に、自分の顧問税理士や第三者の専門家にセカンドオピニオンを求めるのが安全です。 - 「節税」と「課税の繰り延べ」の違いを整理する 多くのスキームは税金をゼロにするのではなく、支払う時期を先送りしているだけです。
将来、レンタル収入や売却益として課税されるタイミングが来ることを前提に、資金計画を立てておく必要があります。
つまずきやすいポイント
「全額経費にできる」という言葉だけを聞くと、税金そのものが減ると誤解しがちですが、実態は課税の繰り延べであることがほとんどです。
また、否認されるかどうかは制度の名前ではなく「事業実態が伴っているか」で判断されるため、同じ資産・同じ特例を使っていても、運用の仕方次第で結果が大きく変わります。
もし過去に同種のスキームで申告してしまっている場合は、放置せず早めに顧問税理士に相談し、修正申告の要否を確認することをおすすめします。
節税をやりすぎることで、金融機関からの評価に影響が出るケースがある点にも注意が必要です。
この点は個人事業主の節税、やりすぎ注意|融資・住宅ローンで損しないための考え方でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
また、不動産投資など他の「投資型の節税」でも似たような見極めが必要になります。
不動産投資の節税、本当に得する人・損する人の違いとはも、営業トークをそのまま信じる前に読んでおくと判断の助けになるはずです。
まとめ
ドローン節税は、少額減価償却資産の特例という制度の隙間を使った課税の繰り延べであり、2022年度の税制改正で貸付用資産が対象外となったことで実質的に使えなくなりました。
似たような話を持ちかけられたときは、貸付目的かどうか・事業実態が説明できるかを確認し、契約前に顧問税理士へ相談することが遠回りに見えて一番の近道です。
節税を考えるときの土台となる考え方は、節税の基本と失敗しない考え方でも整理していますので、ぜひ参考にしてください。
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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