会社の出張で飛行機に乗ると、社長個人のマイレージ口座にマイルが貯まることがあります。
このマイルを社長がプライベートの旅行などに使った場合、税務上まったく問題ないとは言い切れません。
会社が出張費を負担した結果、社長個人にマイルという経済的利益が生じているため、社長への給与、いわゆる現物給与・経済的利益として課税される可能性があります。
ただし、航空マイルについて直接「この場合は必ず給与課税する」と定めた法令やタックスアンサーがあるわけではありません。そのため、金額、利用状況、会社のルール、精算の有無を確認しながら判断する必要があります。
経営者
出張でマイルを貯めて、社長個人がプライベートで使った場合、税務上問題ありますか?
税理士
税務上、問題になる可能性があります。
会社負担の出張によって社長個人のマイレージ口座に付与されたマイルは、社長が自費で買い物をして取得した通常のポイントとは性質が異なります。
会社の費用負担に基づいて、社長個人が経済的利益を受けていると見ることができるため、社長に対する給与、つまり現物給与・経済的利益として課税されるリスクがあります。
経営者
会社の出張で飛行機に乗っただけですよね。それでも給与になる可能性があるのですか?
税理士
はい。ポイントは、航空券代を誰が負担しているかです。
社長が自分のお金で航空券を買って、その結果としてマイルを取得したのであれば、通常の個人利用のポイントに近い話になります。
しかし、会社が業務出張の航空券代を負担し、その支出によって社長個人のマイレージ口座にマイルが付与されている場合、会社の費用支出に基づいて社長個人に利益が移転している構造になります。
そのため、会社から社長へ経済的利益を与えたものとして、給与課税の問題が出てきます。
経営者
マイルについて、直接決まった法律や通達はあるのですか?
税理士
航空マイルについて、「会社出張で貯まったマイルを役員が使ったら必ずこう処理する」と直接定めた法令や基本通達は確認できていません。
ただし、所得税法では、給与所得には給料や賞与だけでなく、これらの性質を有する給与が含まれます。
また、収入金額には金銭だけでなく、物や権利その他の経済的利益も含まれます。
つまり、現金で支給していなくても、会社の負担によって社長個人が経済的利益を受けている場合には、給与課税の対象になり得るということです。
経営者
税務大学校の論文では、会社の支出で役員がポイントを取得した場合の話があると聞きました。
税理士
はい。税務大学校論叢第100号の「法人が企業ポイントを取得した際の所得認識について」では、法人の費用支出に際して、役員等が自己名義でJALマイレージなどの企業ポイントを取得するケースが検討されています。
同論文では、法人の業務に基因して役員等が経済的利益を受けている場合、役員等の給与所得として扱うべきとの整理が示されています。
さらに、課税時期についても、私的に使った時点ではなく、原則としてポイント取得時に時価相当額の給与課税を行うべきではないか、という考え方が示されています。
ただし、これは税務大学校の研究論文による整理であり、マイレージについて直接定めた法令や通達そのものではありません。そのため、実務上は金額や運用実態を確認して慎重に判断します。
経営者
もし社長への給与とされた場合、会社側ではどうなりますか?
税理士
社長は会社の役員ですので、法人税法上の役員給与の問題が出てきます。
役員給与には、金銭で支払う給与だけでなく、経済的な利益も含まれます。
もしマイル相当額が社長への役員給与と判断された場合、出張ごとにマイル数や価値が変動するため、通常は毎月同額で支給される定期同額給与にはなじみにくいです。
その結果、会社側では、その役員給与相当額が損金不算入になる可能性があります。
経営者
社長個人には所得税がかかるのですか?
税理士
給与として認定される場合、社長個人には給与所得として所得税が課税される可能性があります。
また、会社が給与を支払う場合には、原則として源泉徴収義務があります。
そのため、マイル相当額が給与とされる場合、会社側では源泉所得税の処理も検討する必要があります。
単に「現金を渡していないから給与ではない」とは言い切れません。
経営者
マイルは現金ではないですし、1マイルいくらと決めるのも難しいですよね。
税理士
そのとおりです。そこが実務上難しい点です。
航空マイルは、特典航空券に交換する路線、時期、座席クラスなどによって価値が変わります。また、現金のようにそのまま換金できるとは限りません。
一方で、キャッシュバックや電子マネー交換など、一定の換算レートがあるポイントであれば、その換算レートを時価の参考にする考え方もあります。
マイルの場合は評価が難しいため、少なくとも年間で会社出張からどれくらいマイルが発生し、どれくらいを私的に利用しているかを把握する必要があります。
経営者
少額であれば問題になりませんか?
税理士
金額的重要性は判断要素になります。
少額で、たまたま発生した程度であれば、過年度まで大きく修正する実益が乏しいケースもあります。
ただし、会社負担の出張が多く、毎年まとまったマイルが発生し、それを社長がプライベート旅行に使っているような場合は、税務上のリスクは高くなります。
特に役員の場合は、給与課税だけでなく、法人側の損金不算入や源泉所得税の問題も出てきますので、軽く見ない方がよいです。
経営者
会社出張で貯まったマイルを、今後どう扱えば安全ですか?
税理士
最も安全なのは、会社負担の出張で取得したマイルは、原則として今後の会社の業務出張に使用するというルールにすることです。
私的利用を認める場合には、合理的に算定した相当額を社長から会社へ精算する方法も検討します。
また、会社としてマイルの取扱規程を作り、会社出張分と個人利用分を区分し、私的利用時の精算方法を明確にしておくことが重要です。
ルールがないまま社長個人が自由に使える状態にしていると、会社が社長に経済的利益を与えていると見られやすくなります。
経営者
過去に使ってしまった分は、どうすればよいですか?
税理士
まず、会社負担の出張によって発生したマイル数と、社長が私的に利用したマイル数を確認します。
そのうえで、金額的重要性、利用頻度、会社の認識、精算の有無、評価方法を整理します。
金額が大きい場合や、継続的に私的利用している場合は、給与課税、源泉所得税、役員給与の損金不算入まで検討する必要があります。
一方、金額が限定的で、今後の運用を見直すことで足りる場合もあります。
いずれにしても、過去分をどう扱うかは、マイル数や利用内容を確認したうえで個別判断になります。
経営者
個人カードで航空券を決済して、会社が後から精算している場合のカードポイントも同じですか?
税理士
同じ問題が生じる可能性があります。
会社の業務出張費を実質的に会社が負担しているにもかかわらず、社長個人のカードに決済ポイントが貯まる場合、そのポイントも会社の費用支出に基づく経済的利益と見られる可能性があります。
搭乗マイルなのか、決済ポイントなのか、法人カードなのか個人カードなのかによって整理は変わりますが、会社負担の支出によって社長個人にポイントが貯まるという構造は共通しています。
今後は、可能であれば法人カードや法人アカウントに切り替え、個人のポイントと会社のポイントを分けることをおすすめします。
町田・相模原で役員給与・出張旅費の処理に不安がある方へ
出張旅費、日当、航空マイル、クレジットカードポイントは、一つひとつの金額は小さく見えても、役員が関係する場合には、給与課税、源泉所得税、法人側の損金不算入の問題につながることがあります。
特に中小企業では、社長個人のマイル・カード・口座と、会社の支出が混在しやすいため、早い段階でルールを整えることが重要です。
町田・相模原で、役員給与、出張旅費、会社カード、航空マイルの税務処理に不安がある方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、会社負担額、マイルの発生額、私的利用額、会社の規程、精算の有無、マイルの評価方法、過年度処理の重要性などにより異なります。航空マイルの私的利用は役員給与・源泉所得税の問題を含むため、個別判断が必要です。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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