消費税の簡易課税制度は、実際の仕入れにかかった消費税額を集計するのではなく、売上に係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を乗じて仕入税額控除額を計算する制度です。
事務負担を軽くできる一方で、一度適用を開始すると、原則として2年間は継続して適用しなければなりません。
そのため、簡易課税を選んだ翌年に車両、機械、内装、建物などの大きな設備投資を予定している場合は、特に注意が必要です。
経営者
簡易課税を選んだのですが、翌年に本則課税へ戻すことはできますか?
税理士
簡易課税を実際に適用し始めた翌課税期間に、すぐ本則課税へ戻すことは原則できません。
簡易課税制度は、一度適用を開始すると、原則として2年間継続して適用する必要があります。
そのため、通常は「簡易課税1年目、簡易課税2年目、3年目から本則課税」という流れになります。
経営者
簡易課税を選択する届出書を出したら、必ず2年縛りになるのですか?
税理士
正確には、簡易課税制度選択届出書の効力が生じ、実際に簡易課税の適用が始まった課税期間から考えます。
消費税法37条では、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、所定の届出書を提出した場合に、簡易課税制度の適用を受けられることが定められています。
そして、簡易課税の適用をやめるためには、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。
ただし、事業を廃止した場合などを除き、簡易課税の効力が生じた課税期間の初日から2年間が経過するまでは、不適用届出書を提出できません。
経営者
たとえば12月決算法人の場合、いつから本則課税へ戻せますか?
税理士
たとえば、12月決算法人が令和8年12月期から簡易課税を適用した場合で考えます。
この場合、原則として令和8年12月期と令和9年12月期の2年間は簡易課税です。
令和10年12月期から本則課税へ戻したいのであれば、原則として令和9年12月31日までに、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。
つまり、本則課税へ戻したい課税期間が始まる前日までに、不適用届出書を出しておく必要があります。
経営者
翌年に設備投資をする予定が出てきました。それでも本則課税には戻せないのですか?
税理士
通常の設備投資予定の変更だけで、簡易課税の2年間の継続適用を外して、翌年すぐに本則課税へ戻せるとは考えない方が安全です。
消費税法には、やむを得ない事情がある場合の特例があります。
ただし、このやむを得ない事情は、災害や事業者の責めに帰することができない状態などを想定するものです。
「設備投資をすることになったので、簡易課税をやめたい」という通常の経営判断だけで、届出期限や2年間の継続適用を遡って変更できるとは整理しない方がよいです。
経営者
設備投資があると、なぜ簡易課税では不利になることがあるのですか?
税理士
本則課税では、課税売上げに係る消費税額から、実際の課税仕入れ等に係る消費税額を控除します。
そのため、車両、機械、内装工事、建物などに多額の消費税を支払った場合、要件を満たせば、その仕入税額が控除対象になります。
一方、簡易課税では、実際に支払った仕入消費税額を積み上げるのではなく、売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けて控除額を計算します。
そのため、本則課税なら設備投資により還付になるケースでも、簡易課税ではその設備投資額を直接反映した還付を受けることはできません。
経営者
簡易課税を選ぶ前に、設備投資の予定を確認すべきだったということですか?
税理士
そのとおりです。
簡易課税は、経理処理を簡単にしやすく、業種によっては税額面で有利になることもあります。
しかし、翌期や翌々期に大きな設備投資がある場合には、本則課税の方が有利になる可能性があります。
特に、車両、機械装置、店舗内装、建物、厨房設備、美容機器、医療機器などを購入する予定がある場合は、簡易課税制度選択届出書を提出する前に、本則課税と簡易課税のシミュレーションを行うべきです。
経営者
本則課税へ戻った後に設備投資をすれば、必ず問題ありませんか?
税理士
必ず単純に有利になるとは限りません。
本則課税へ戻った後に、税抜1,000万円以上の高額特定資産等を取得する場合には、免税事業者への復帰や、簡易課税の再選択について一定期間の制限が生じることがあります。
また、調整対象固定資産、居住用賃貸建物、課税売上割合、インボイスの保存状況などによっても、消費税の計算結果は変わります。
設備投資額が大きい場合は、簡易課税か本則課税かだけでなく、消費税の各種制限まで含めて確認する必要があります。
経営者
結局、今から何を確認すればよいですか?
税理士
まず、簡易課税制度選択届出書を提出した日と、実際に簡易課税の適用が始まった課税期間を確認してください。
次に、2年間の継続適用期間がいつまでなのかを確認します。
そのうえで、本則課税へ戻したい課税期間がある場合には、その課税期間が始まる前日までに、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出できるかを確認します。
さらに、翌期や翌々期に設備投資を予定している場合は、投資の時期、金額、内容、インボイスの取得可否を整理し、本則課税と簡易課税の税額を比較する必要があります。
町田・相模原で消費税の簡易課税・本則課税の判断に迷っている方へ
簡易課税は、経理処理を簡単にできる便利な制度です。
しかし、一度適用を開始すると、原則として2年間は継続して適用する必要があります。
特に、翌期や翌々期に車両、機械、店舗内装、建物などの大きな設備投資を予定している場合、簡易課税を選んだことで、本則課税なら受けられた可能性のある消費税還付を受けられないことがあります。
町田・相模原で、消費税の簡易課税と本則課税のどちらを選ぶべきか、設備投資前に判断したい方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判断は、届出書の提出日、簡易課税の適用開始時期、決算月、設備投資の時期・金額、インボイスの保存状況、課税売上割合、高額特定資産等の有無により異なります
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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