災害に遭った取引先へ見舞金を渡した場合、それが交際費になるのか、それとも通常の損金として処理できるのかは、実務上よく問題になります。
結論からいうと、取引先への通常の見舞金は、原則として交際費等に該当し得ます。
しかし、災害により被害を受けた取引先に対して、被災前からの取引関係を維持・回復する目的で、通常営業を再開するための復旧過程にある期間内に支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず、損金算入できる取扱いがあります。
重要なのは、通常の「お付き合いとしての見舞金」と、被災した取引先の復旧を支援するための「事業上の災害見舞金」を分けて考えることです。
経営者
災害に遭った取引先へ見舞金を渡したいと思っています。
これは交際費になるのでしょうか?
税理士
一定の要件を満たす取引先への災害見舞金であれば、交際費等には該当せず、損金算入できます。
国税庁にも、地震で工場が全壊した取引先へ支出する災害見舞金について、取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程で支出したものは、交際費等に該当しないとする質疑応答事例があります。
ただし、通常の見舞金と同じように、単なる付き合いや贈答として渡すものまで、すべて交際費から外れるわけではありません。
経営者
通常の見舞金と、災害見舞金では何が違うのですか?
税理士
通常、得意先や仕入先など、社外の人の慶弔・禍福に際して支出する金品は、原則として交際費等に該当します。
たとえば、取引先の社長が病気になったために渡す見舞金や、慶弔に伴う金品は、慰安や贈答に近い性質があります。
これに対して、災害見舞金が例外的に交際費等から除かれるのは、被災した取引先を復旧させることによって、自社の取引関係を維持・回復し、自社の事業上の損失を避けるための費用と考えられるからです。
経営者
では、どのような条件を満たせば、交際費にならないのでしょうか?
税理士
実務上は、次の点を確認します。
まず、災害を受けた取引先に対する支出であることです。
次に、災害前から取引関係があることです。
さらに、その取引関係の維持・回復を目的としていることが必要です。
そして、災害発生後相当の期間内、つまり取引先が通常営業を再開するための復旧過程にある期間内に支出する必要があります。
この要件を満たす場合には、現金の見舞金だけでなく、事業用資産の無償提供や役務提供のための費用についても、交際費等に該当しない取扱いがあります。
経営者
「災害発生後相当の期間内」というのは、何か月以内という決まりがありますか?
税理士
何か月以内という一律の期間が決まっているわけではありません。
国税庁の通達では、災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間とされています。
したがって、災害からかなり時間が経過し、すでに通常営業に戻った後に、付き合いとして見舞金を渡すような場合には、通常の交際費等と判断される可能性が高くなります。
支給時期は非常に重要です。
経営者
金額はいくらまでなら大丈夫ですか?
税理士
税務上、「10万円までなら大丈夫」「50万円を超えたら交際費」というような明確な上限はありません。
国税庁のFAQでも、取引先の被災程度や取引状況等を勘案した相応の災害見舞金であれば、金額の多寡自体は問わないとされています。
ただし、「相応」であることは必要です。
たとえば、普段の年間取引額が小さい取引先に対して、取引実態と比べて著しく高額な見舞金を支払う場合には、その合理性を説明できる資料が必要になります。
経営者
取引先の会社ではなく、取引先の社長個人や従業員個人に渡す場合も同じですか?
税理士
そこは注意が必要です。
災害見舞金として交際費等から除かれる取扱いは、基本的には被災した取引先の事業復旧を支援するためのものです。
取引先法人ではなく、その会社の社長や従業員個人に直接渡す場合には、取引先法人の復旧支援というより、個人に対する付き合いとしての性質が強くなります。
そのため、個人事業主である取引先本人に対する支援などを除き、取引先の役員・従業員個人への見舞金は、原則として交際費等になる可能性が高いです。
経営者
災害見舞金は、寄附金になることはありませんか?
税理士
ここも誤解しやすい点です。
法人税法上、寄附金には、名称を問わず、金銭その他の資産や経済的利益の贈与・無償供与が含まれます。条文上も、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わないとされています。
つまり、「見舞金」という名前を付ければ、交際費でも寄附金でもなくなるわけではありません。
ただし、今回のように、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、災害発生後相当の期間内に取引先へ支出する災害見舞金については、国税庁が交際費等に該当しないと示しています。
また、取引先への自社製品等の災害支援についても、寄附金又は交際費等以外の費用として損金になると説明されています。
したがって、要件を満たす災害見舞金は、一般寄附金として損金算入限度額の計算に入れるのではなく、通常の事業上の損金として処理するのが基本的な整理です。
経営者
消費税の処理はどうなりますか?
税理士
金銭で支払う災害見舞金は、物やサービスの購入の対価ではありません。
そのため、消費税の課税仕入れには該当せず、仕入税額控除を取るものではありません。
法人税上は損金になり得る一方で、消費税では課税仕入れにならないという点は分けて考える必要があります。
経営者
領収書は必要ですか?被災している取引先に領収書をお願いしにくいのですが。
税理士
被災先に無理に領収書を発行してもらうのが難しい場合もあります。
国税庁のFAQでは、その場合には少なくとも帳簿に、支出先の所在地、名称、支出年月日を記録しておく必要があるとされています。
実務上は、それだけでなく、災害の内容、被災状況、従前の取引関係、見舞金の支給目的、金額の決定根拠、支給日などを、社内稟議書やメモに残しておくべきです。
たとえば、「○年○月○日発生の○○災害により被災した○○社の営業復旧支援及び従前の取引関係維持・回復のため支給」といった記録を残します。
経営者
結局、交際費にしないために一番大事なことは何ですか?
税理士
一番大事なのは、「誰に、いつ、何のために払ったのか」を説明できることです。
取引先法人や個人事業主に対して、被災前からの取引関係を維持・回復する目的で、通常営業を再開するまでの復旧過程にある時期に、被災程度や取引状況に照らして相応の金額を支払う。
この流れが説明できる場合には、交際費等ではなく、通常の損金として処理できる可能性が高くなります。
一方で、支給時期が遅い、取引実績が薄い、金額が不自然に高い、取引先法人ではなく役員や従業員個人に渡している、といった場合には、交際費等と判断されるリスクが高くなります。
町田・相模原で法人税務の判断に迷った方へ
災害に遭った取引先への見舞金は、名前だけを見ると交際費や寄附金に見えます。
しかし、税務上は、支出先、支出時期、支出目的、被災状況、従前の取引関係によって、交際費等に該当しない損金として処理できる場合があります。
一方で、通常の見舞金、役員個人への支給、復旧後の付き合いとしての支出、多額で合理性の説明が難しい支出は、交際費等として扱われる可能性があります。
町田・相模原で、法人税務、交際費、寄附金、災害見舞金の処理に迷った方は、タクスリンク税理士事務所にご相談ください。
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要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の処理は、支給先、災害の内容、被災状況、支給時期、取引関係、金額、支給目的、証拠資料の保存状況などによって異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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