退職金の税金、いくら引かれる?知っておきたい控除と受け取り方のコツ

「退職金、思っていたより手取りが少なかった」──そんな声を聞いたことはありませんか。
長年勤め上げた末に受け取る退職金は、老後の生活を支える大切なお金です。
ところが受け取り方や手続きを知らないまま済ませてしまうと、本来払わなくていいはずの税金まで多く引かれてしまうことがあります。
退職金には、所得税の中でもかなり手厚い優遇が用意されているのですが、その中身を知らないまま損をしている人は意外に多いものです。
この記事では、退職金にかかる税金の仕組みと、受け取るときに気をつけたいポイントを整理していきます。

なぜ退職金の税金は不安になりやすいのか

退職金への不安が大きくなりやすいのには理由があります。
まず金額そのものが大きいため、税額が数十万円変わるだけでも手取りへの影響が実感しやすいこと。
そして給与のように毎年経験するものではないため、仕組みに触れる機会がほとんどないことです。

さらに、退職金を受け取る前に会社へ提出する書類の有無で税額が大きく変わる仕組みになっています。
この書類の存在を知らないまま退職を迎えてしまうと、必要以上に税金を天引きされたまま気づかない、ということも起こり得ます。
まずは仕組みを知ることが、損をしないための第一歩です。

退職金の税金を抑えるための基本の仕組み

1. 退職所得控除を確認する

退職金には「退職所得控除」という、勤続年数に応じた非課税枠が用意されています。

  • 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年として切り上げて計算します。
たとえば勤続30年なら控除額は「800万円+70万円×10年=1,500万円」となり、退職金がこの金額以下であれば所得税はかかりません
長く勤めるほど控除額が積み上がる仕組みです。

2. 課税対象は控除後の金額のさらに半分

退職所得控除を差し引いてもなお残る金額がある場合、その全額に課税されるわけではありません。
「(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2」で計算した金額が、実際の課税対象(課税退職所得金額)になります。
控除だけでなく、さらに半分に圧縮されるところが給与所得との大きな違いです。

3. 他の所得と合算されない分離課税

退職所得は、給与所得や事業所得など他の所得と合算せずに税額を計算する「分離課税」の対象です。
合算されないため、退職金を受け取った年に所得が跳ね上がって税率区分が上がる、といった影響を受けません。
控除・1/2課税・分離課税の3つが組み合わさることで、同じ金額を給与として受け取るよりも実効税率がかなり低くなるよう設計されています。

4. 「退職所得の受給に関する申告書」を忘れずに提出する

退職金を受け取る前に、勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくと、会社側が控除まで含めて税額を計算し、源泉徴収だけで課税関係が完結します。
原則として確定申告は不要です。

一方、この申告書を提出しないまま退職金を受け取ると、控除を考慮せず一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。
多く天引きされた分は確定申告をすれば還付を受けられますが、忘れてしまう人も少なくありません。
退職前に会社の担当窓口へ提出したかどうか、必ず確認しておきたいところです。

つまずきやすいポイント・よくある誤解

年金形式で受け取ると税・社会保険料の負担が増えやすい
退職金は一時金としてまとめて受け取るのが基本ですが、企業年金などで分割受け取り(年金形式)を選べる場合もあります。
年金形式で受け取った分は退職所得ではなく雑所得として扱われ、他の所得と合算する総合課税の対象になります。
国民健康保険料など社会保険料の算定対象にもなりやすいため、一時金で受け取る場合に比べて手取りが目減りしやすい点は知っておきたいところです。
どちらが有利かは退職金の金額や他の所得状況によって変わるため、金額が大きい場合は一時金と年金の併用も含めて事前にシミュレーションしておくと安心です。

iDeCoと退職金を近い時期に受け取ると控除が重複して使えないことがある
iDeCo(個人型確定拠出年金)などの一時金と、会社の退職金を近い時期に受け取ると、両方に退職所得控除をフルに使うことができず、想定より税額が増えることがあります。
2026年1月からは、この控除の重複を避けるための受け取り間隔のルールが5年から10年に延長されました。
iDeCoと退職金の両方を受け取る予定がある人は、受け取る順番と間隔次第で税額が数十万円単位で変わることがあるため、時期が近づいたら早めに試算しておくと安心です。

経営者・役員は会社側の設計も関わってくる
役員として退職金を受け取る場合、金額の設定は会社側の判断も絡んできます。
役員報酬で節税できるって本当?損しない決め方と3つの落とし穴でも触れているとおり、役員報酬と退職金では税務上の扱いが異なるため、在任中の報酬設計とあわせて考える視点が欠かせません。

個人事業主には退職金制度自体がない
個人事業主は従業員と違って自分自身に退職金を支払うことができません。
個人事業主の節税、やりすぎ注意|融資・住宅ローンで損しないための考え方でも紹介している小規模企業共済は、こうした個人事業主が退職金に近い節税効果を得られる制度のひとつです。
将来的な法人化を検討している場合は、マイクロ法人は本当に節税になる?仕組みとメリット・デメリットを整理もあわせて確認しておくと、選択肢の幅が広がるはずです。

まとめ

退職金には退職所得控除・1/2課税・分離課税という3つの優遇が組み合わさっており、仕組みを知って正しく手続きをするだけで税負担を大きく抑えられます。
受け取り方や申告書の提出漏れで損をしないよう、退職を迎える前に一度、自分の勤続年数と控除額を確認しておきましょう。

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末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。