消費税について、本来は免税事業者になれる事業者が、自分から「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になることがあります。
たとえば、設備投資による消費税還付を受けたい場合、インボイス登録や取引先対応を考える場合などです。
しかし、一度自分から課税事業者を選択すると、翌課税期間にすぐ免税事業者へ戻れるとは限りません。
原則として、課税事業者となった日から2年間は課税事業者が継続します。さらに、その期間中に一般課税で税抜100万円以上の調整対象固定資産を取得した場合には、免税事業者へ戻れる時期がさらに遅れることがあります。
経営者
消費税の課税事業者を自分から選んだら、翌年すぐ免税事業者に戻れますか?
税理士
原則として、翌課税期間にすぐ免税事業者へ戻ることはできません。
もともと免税事業者になれる事業者が、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になった場合、原則として課税事業者となった日から2年間は課税事業者が継続します。
そのため、通常の1年課税期間であれば、最初の2課税期間は課税事業者となり、他の課税事業者該当要件がなければ、最短で3課税期間目から免税事業者へ戻ることを検討します。
経営者
「翌年」ではなく、「翌課税期間」で考えるのですか?
税理士
はい。消費税では、「翌年」というより「翌課税期間」で考えます。
個人事業者であれば、通常は1月1日から12月31日までが課税期間です。
法人であれば、原則として事業年度が課税期間になります。
たとえば3月決算法人であれば、4月1日から翌年3月31日までが一つの課税期間になります。そのため、免税に戻れる時期を判断するときは、暦年ではなく、その事業者の課税期間を確認する必要があります。
経営者
2年間は必ず課税事業者になるということですか?
税理士
原則として、その理解でよいです。
消費税法では、課税事業者の選択をやめる場合、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。
ただし、事業を廃止した場合などを除き、課税事業者となった日から2年間は、この選択をやめることができません。
したがって、課税事業者選択届出書を提出するときは、少なくとも2課税期間分の消費税負担を見込んで判断する必要があります。
経営者
たとえば、2027年から課税事業者を選んだ場合はどうなりますか?
税理士
1年課税期間の事業者が2027年から課税事業者を選択した場合、通常は2027年と2028年は課税事業者になります。
他に課税事業者となる要件がなければ、最短で2029年から免税事業者に戻れるかを検討します。
ただし、2029年から免税事業者に戻るためには、免税に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しておく必要があります。
届出を出し忘れると、免税に戻れるはずの課税期間も課税事業者のままになることがあります。
経営者
「不適用届出書」を出せば、必ず免税事業者に戻れるのですか?
税理士
いいえ。そこは非常に重要です。
課税事業者選択不適用届出書を提出することと、実際に免税事業者になれることは別問題です。
たとえば、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合、特定期間の判定により課税事業者になる場合、インボイス登録事業者である場合、新設法人など別の課税事業者該当要件がある場合には、課税事業者の選択をやめても、引き続き課税事業者になります。
つまり、不適用届出書は「自分から課税事業者を選んだ状態をやめる届出」であって、必ず免税事業者に戻れる届出ではありません。
経営者
設備投資をした場合は、さらに戻れなくなると聞きました。
税理士
はい。ここが最も注意すべき点です。
課税事業者を選択してから2年を経過する日までの間に開始した各課税期間のうち、簡易課税を適用していない課税期間、つまり一般課税の課税期間で、調整対象固定資産を取得した場合には、さらに制限がかかります。
この場合、その調整対象固定資産を取得した課税期間の初日から原則3年間、課税事業者選択をやめることができません。
しかも、この期間は、免税事業者へ戻れないだけでなく、簡易課税制度を選択することも制限されます。
経営者
調整対象固定資産とは何ですか?
税理士
簡単にいうと、棚卸資産以外の一定の固定資産で、一の取引単位につき税抜100万円以上のものです。
具体的には、建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、一定の無形固定資産などが該当します。
たとえば、税抜100万円以上の機械、車両、内装設備、厨房設備、美容機器、医療機器などを一般課税の期間に購入する場合には、この制限に該当しないか確認が必要です。
経営者
2027年から課税事業者を選んで、2027年に設備を買った場合はどうなりますか?
税理士
1年課税期間の事業者が2027年から課税事業者を選択し、2027年に一般課税で調整対象固定資産を取得した場合、2027年から2029年までの3年間は課税事業者選択をやめることができません。
そのため、他の課税要件がなければ、最短で2030年から免税復帰を検討するイメージになります。
通常の2年縛りだけなら2027年・2028年で済むところ、調整対象固定資産の取得により、2029年まで制限が延びるということです。
経営者
では、2028年に設備を買った場合はどうなりますか?
税理士
2028年に一般課税で調整対象固定資産を取得した場合には、2028年から原則3年間の制限がかかります。
そのため、2028年、2029年、2030年について制限を受け、他の課税要件がなければ、最短で2031年から免税復帰を検討することになります。
設備の取得時期が1年違うだけで、免税に戻れる時期が大きく変わることがあります。
設備投資による消費税還付を目的として課税事業者を選択する場合は、届出を出す前、設備を取得する前にシミュレーションする必要があります。
経営者
簡易課税を選んでいれば、この3年制限は避けられますか?
税理士
消費税法9条7項の調整対象固定資産の制限は、簡易課税を適用していない課税期間で取得した場合に問題になります。
簡易課税を適用している課税期間は、実際の仕入税額を個別に控除する仕組みではなく、みなし仕入率で計算する制度です。そのため、一般課税で固定資産の仕入税額控除や還付を受けた後、すぐ免税や簡易課税へ移ることを防ぐという制度趣旨とは場面が異なります。
ただし、簡易課税制度そのものにも、原則として2年間の継続適用があります。
また、調整対象固定資産の3年制限を受けている期間には、原則として簡易課税制度選択届出書を提出することもできません。
つまり、一般課税で調整対象固定資産を取得した場合、「免税に戻れないだけでなく、簡易課税にも逃げられない」ことがあります。
経営者
税抜1,000万円以上の設備を買った場合も同じですか?
税理士
税抜1,000万円以上の場合は、さらに別の制度も確認する必要があります。
調整対象固定資産は、原則として税抜100万円以上の固定資産が問題になります。
一方、税抜1,000万円以上の高額特定資産を取得した場合には、消費税法12条の4による免税点制度や簡易課税制度の制限も問題になります。
高額特定資産には、一定の棚卸資産も含まれます。
そのため、大きな設備投資、不動産取得、高額な機械装置の購入などがある場合は、9条7項だけでなく、12条の4の確認も必要です。
経営者
結局、課税事業者を選ぶ前に何を確認すべきですか?
税理士
最低限、次の点を確認してください。
まず、いつから課税事業者になるのか。次に、最短でいつ免税に戻れる可能性があるのか。そして、最初の2年間に税抜100万円以上の固定資産を取得する予定があるかです。
さらに、簡易課税を選ぶ予定があるか、税抜1,000万円以上の高額特定資産を取得する予定があるか、インボイス登録を継続する予定があるかも確認します。
消費税は、届出の提出時期と設備投資の時期がずれるだけで、納税額や免税復帰時期が大きく変わります。
課税事業者選択届出書は、出してから後悔しやすい届出の一つです。提出前に、少なくとも2年から3年先までの売上、経費、設備投資、簡易課税の適用可能性を確認する必要があります。
町田・相模原で消費税の課税選択に迷っている方へ
消費税の課税事業者選択は、単に「還付が受けられそう」「インボイス登録が必要そう」という理由だけで判断すると危険です。
課税事業者選択届出書には原則2年間の拘束があり、さらに一般課税で調整対象固定資産を取得した場合には、免税復帰や簡易課税の選択が長期間制限されることがあります。
町田・相模原で、消費税の課税選択、インボイス登録、設備投資、簡易課税制度の判断に迷っている方は、届出を提出する前にタクスリンク税理士事務所へご相談ください。
町田・相模原で税理士をお探しなら、タクスリンク税理士事務所へ
要点
主な根拠
※本記事は、一般的な税務上の取扱いを解説したものです。実際の判定は、課税期間、届出書の提出日、課税事業者となった時期、設備投資の内容、固定資産の取得価額、一般課税・簡易課税の選択状況、インボイス登録の有無などにより異なります。
Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。
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