本案件の概要
下記の案件につき、創業融資申し込みのサポートを行うこととなりました。
- 資金使途 運転資金。
- 会社概要 設立前。広告代理事業。
- 融資申込先 日本政策金融公庫。
- その他 自己資金が親から贈与を受けた資金のみ。斯業経験1年。
本案件のポイント
この会社は、日本政策金融公庫への創業融資の申し込みをご希望でしたが、自己資金が親から贈与を受けた資金のみという点が目に留まりました。
自己資金は、日本政策金融公庫にとって、創業にあたり、創業者がどれだけ準備をしてきたのかを測る、いわば「創業者の熱意の証」であり、事業経験(斯業経験)、創業計画書と並ぶ、創業融資審査における重要な要素です。
自己資金とは、事業のために使う資金のうち、返済の必要のないものをいいますので、親から贈与を受けた資金も自己資金となります。
しかしながら、贈与を受けた資金は、「創業者の熱意の証」としては弱いことから、創業融資審査においては、創業者がこつこつと蓄積した自己資金と比して評価は低くなります。
また、融資の希望金額も、自己資金の2.5倍に相当する金額であり、かつ創業者が若年で斯業年数も短かったため、できれば、少しでも創業者自身で蓄積した自己資金を追加したい案件でした。
本案件の攻め口
上記により、
- ① 斯業経験は短いものの、前職で広告主任として抜擢され、社長賞を受賞していること等、事業に係る創業者のスキルの高さ(=定性要因)を強くアピールする
- ② 贈与契約書の締結により、親から贈与を受けた資金が返済の必要のないもの(=自己資金)であることを法的に明らかにする
- ③ 既に受注があることを、取引先と交わしたメールや契約書等の提出により明らかにし、創業計画書の成功確率が高いものであることをアピールする
こととしました。
本案件の結果
満額可決。
本案件のまとめ
自己資金は、日本政策金融公庫の創業融資審査において、新創業融資制度の要件とされるほか、融資額の目安となる等、非常に重要な要素の一つです。
しかしながら、本件のように、若年の創業者にとっては、創業、あるいは創業融資の獲得に充分な自己資金が蓄積できないケースが少なくありません。
中小企業の創業と発展を、地域経済再興及び国際競争力強化戦略の核として位置付ける我が国にとって、優れた人材が、若年であるがゆえに創業を諦めざるを得ないという構造は自己矛盾をきたしています。
そこで、日本政策金融公庫では、女性、若者/シニア起業家支援資金を設けることで、若年者の創業を後押ししています。
ただし、当該融資制度は、金利こそ他の融資制度と比して低く設定しているものの、原則として代表者保証を要するものです。
したがって、当該融資制度は、自己資金が不足し、無担保・無保証の融資制度である新創業融資制度の自己資金要件を充足しない若年者の創業へのインセンティブとして弱いといえます。
自己資金の乏しい若年の創業者は、本案件のように、親から贈与を受けた資金を自己資金とする等により、新創業融資制度を利用することができます。
無担保・無保証というメリットを享受し、創業という夢に向かって踏み出していただきたいと、強く願います。
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Author Profile
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起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
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