銀行融資の金利を下げるには−銀行融資の金利計算の仕組みと金利を下げる交渉術

利息は保険料と捉えるべきもの

大企業と比べて財務体質の脆弱な中小企業にとって、銀行融資は不可欠なものです。

利息は、いざという時に使える資金がある状態を作るための保険料として捉えましょう。

とはいえ、より低金利を目指す工夫も必要です。

銀行融資の金利の決まり方

銀行融資の金利については、

  1. 既に固定の金利が設定されている場合
  2. 銀行が任意に金利を決定する場合

とが存在します。

具体的には、1については制度融資等が、2についてはプロパー融資制度融資以外の通常の信用保証協会付融資等が、それぞれ該当します。

1については、残念ながら金利を下げる方法はありませんが、そもそも制度融資では、地方公共団体から金利の一部または全部を負担してもらえますので、通常の融資よりも会社の実際の金利負担は小さくなります。

一方、2については、方法次第で金利を下げることが可能です。

銀行はどのようにして金利を決めるのか

銀行は、2の場合について、融資金が回収不能となるリスクの大小等に応じて、金利の高低を決定します。

具体的には、銀行は、

  1. 貸倒れの可能性
  2. 返済期間
  3. 担保
  4. 融資金額

に鑑み、融資の金利を決定します。

A. 貸倒れの可能性

銀行は、融資先が倒産すると、融資金を回収できなくなってしまいます(=貸倒れ)。

このため、貸倒れの可能性の高い会社ほど、金利は高くなり、貸倒れの可能性の低い会社ほど、金利は低くなります

B. 返済期間

銀行は、返済期間が長ければ長いほど、その間に融資先が経営悪化し、融資残高を回収できなくなる可能性が高くなると考えます。

このため、返済期間の長い融資ほど、金利は高くなり、返済期間の短い融資ほど、金利は低くなります

C. 担保

銀行は、融資先が返済困難に陥った場合でも、その融資につき担保を徴していれば、その担保を売却し、その売却代金から融資金を回収することができます。

このため、担保の価額が低いほど、金利は高くなり、担保の価額が高いほど、金利は低くなります

D. 融資金額

銀行にとって、少額の融資であれ、高額の融資であれ、その審査に費やすコストはそう変わりません。

つまり、このコストは、少額の融資であるほど相対的に高くなるといえます。

このため、融資金額が少額であるほど、金利は高くなり、融資金額が高額であるほど、金利は低くなります

融資の金利は、地方銀行ではメガバンクより0.5%ほど高く、信用金庫では1%ほど高くなりますが、これは一般に融資実行額がメガバンク>地方銀行>信用金庫の順に大きいためです。

銀行融資の金利を下げるには

銀行融資の金利を下げるためには、以上を踏まえ、

  1. 貸倒れの可能性をより低くする
  2. 返済期間をより短くする
  3. より価額の高い担保を提供する
  4. より融資金額を高くする

ことを念頭に置いておくことが重要ですが、最も取り組みやすいのは、bではないでしょうか。

融資を受けるにあたり、とりあえずなるべく長期でと考える方は少なくありません。

たしかに、設備の購入費用や広告宣伝費など、投下した資金の回収に相当の期間を要する資金使途については、この考え方が妥当します。

しかしながら、たとえば、投下した資金が比較的短期で回収できる経常運転資金については、あえて短期でという考え方も必要です。

むしろ、経常運転資金については、長期(≒証書貸付)で融資を受けると、月々の元本返済に伴い、いずれ事業資金が不足することとなってしまいます。

経常運転資金は、短期継続融資による調達を目指すべきです。

他の資金需要についても、まず、本当に長期で融資を受けるべき資金需要であるかを吟味し、その必要がないと判断した場合には、「あえて短期で」融資を受けたい旨を銀行に伝えることで、より低金利を引き出すことができるでしょう。

さらに銀行融資の金利を下げるには

実は、上記のほかにも、銀行融資の金利を下げる方法が存在します。

銀行の思考を逆手にとって交渉する方法です。

銀行融資の金利を下げるには、

  • 銀行のノルマを利用して交渉する
  • 銀行間で競争させて交渉する

ことが有効です。

ぜひ、下記を参考に、より低金利で銀行融資を受けられるよう、交渉してみてください。

銀行のノルマを利用して交渉する

銀行は、四半期決算を採用しており、6月が第1四半期、9月が第2四半期、12月が第3四半期、3月が本決算となっています。

銀行の各支店には、それぞれの決算月に、融資残高や預金残高等のノルマが設定されています。

このため、これら決算月には、銀行から融資の営業を受けることがあります。

融資の営業を受けた時は、金利を下げる交渉のチャンスです。

ただ融資を受けるのではなく、

少し金利を下げてくれるのなら、検討させていただきます。

と交渉してみましょう。

ノルマ達成に追われている銀行は、たとえ少し金利が下がっても、融資残高を増やしたいと考えます。

普段は金利交渉に応じてもらえない会社でも、決算月であれば交渉に応じてもらえるということがよくあるものです。

銀行間で競争させて交渉する

銀行の主たる収入源は、融資先から受け取る金利です。

したがって、銀行は、自行の融資先が他行に奪われてしまうことを恐れます。

銀行が時折、他行からの融資残高や、他行の融資条件を尋ねてくるのはこのためです。

ただ正直に答えるのもよいですが、銀行から他行の融資状況を尋ねられた時は、金利を下げる交渉のチャンスです。

他行からは、御行よりも低い金利で融資をしてもらっています。

他行からは、御行よりも低い金利で融資のご提案をいただいています。

と伝えると、他行に融資先を奪われることを恐れる銀行は、他行よりも低金利、最低でも他行と同金利での提案をしなければと考えるものです。

ポイント

・プロパー融資、制度融資以外の通常の信用保証協会付融資等については、金利交渉の余地がある。

・上記の銀行融資の金利は、貸倒れの可能性、返済期間、担保、融資金額によって決定する。

・銀行融資の金利は、交渉次第でも下げることができる。

Author Profile

末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。