サラリーマンの不動産節税、始める前に知っておきたい仕組みと注意点

「不動産投資をすれば節税になる」。
そんな話を聞いて、興味を持ったことはありませんか。

ネットや営業トークでは景気のいい数字ばかりが並びますが、実際に仕組みを理解しないまま始めると、思っていたのと違う結果になることも少なくありません。
サラリーマンの不動産節税は、誰にでも同じように効くわけではなく、年収や物件の選び方によって効果が大きく変わります。
この記事では、なぜ節税になると言われているのか、どんな人に向いているのか、始める前に何を確認すべきかを順番に整理していきます。

なぜ「不動産投資で節税」と言われるのか

サラリーマンの不動産節税は、主に2つの仕組みで成り立っています。

1つ目は「減価償却費」です。
建物や設備は、時間の経過とともに価値が下がっていくものとして、購入費用を耐用年数に応じて少しずつ経費に計上できます。
実際にお金が出ていくわけではないのに、帳簿の上では経費として扱えるのが特徴です。

2つ目は「損益通算」です。
不動産投資で計上した経費が家賃収入を上回り、不動産所得が赤字になった場合、その赤字分を給与所得と合算できます。
合算した結果、課税対象になる所得の総額が下がり、所得税や住民税が軽くなる、という流れです。

たとえば給与所得が900万円のサラリーマンが、不動産投資で300万円の赤字を計上したとします。
課税所得は900万円から600万円へと下がり、税率が下がる分も含めて、納める税金の総額が数十万円単位で軽くなるケースがあります。
「節税できる」と言われる正体は、この損益通算による課税所得の圧縮にあります。

ただし、これはあくまで仕組みの説明であって、誰にでも同じ効果があるわけではありません。
次の章で、実際にどう考えて進めればいいかを見ていきます。

節税効果を判断する手順

まず自分の所得税率を確認する

不動産節税の効果は、もともとの所得税率が高い人ほど大きくなります。
日本の所得税は所得が上がるほど税率も上がる仕組みのため、課税所得が900万円を超えるあたりから税率が33%以上になり、節税効果を実感しやすいラインとされています。
逆に、課税所得がそれより低い場合は、経費を計上しても税率の下がり幅が小さく、リスクに見合う効果が出にくいことがあります。
まずは自分の源泉徴収票や確定申告の内容から、おおよその課税所得を把握するところから始めましょう。

減価償却できるものとできないものを分ける

不動産のうち、経年劣化するとみなされて減価償却できるのは「建物」と「建物附属設備」だけです。
土地は時間が経っても価値が減らないという考え方のため、減価償却の対象になりません。
同じ購入価格の物件でも、建物と土地の割合によって年間の経費計上額は変わってきます。
物件を検討する際は、価格の内訳がどうなっているかを必ず確認しましょう。

耐用年数と物件の築年数を照らし合わせる

木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年というように、建物には構造ごとに法定耐用年数が定められています。
耐用年数を超えた築古の木造物件は、短い期間に減価償却費を集中させやすく、年間の経費計上額が大きくなる傾向があります。
一方で、新築や築浅の物件は減価償却期間が長くなる分、1年あたりの経費は小さくなります。
どちらが良い・悪いという話ではなく、「節税効果の出方」と「物件そのものの収益性」は別の軸で考える必要がある、という点を押さえておくとよいでしょう。

より詳しい計算の考え方は、不動産投資の減価償却、結局いくら経費にできる?計算の仕組みをやさしく整理でも扱っています。

つまずきやすいポイント・よくある誤解

「節税」と「納税の先送り」は違う

ここが最も誤解されやすい部分です。
減価償却を計上した分、帳簿上の建物の価値(簿価)は下がっていきます。
物件を売却するとき、売却額から簿価を差し引いた譲渡所得が大きくなり、そこに新たな税金がかかります。
つまり、保有中に軽くなった税金の一部は、売却のタイミングで戻ってくる仕組みになっているのです。
「節税した分がそのまま手元に残る」と考えていると、売却時に想定外の税負担に驚くことになりかねません。

デッドクロスに注意する

減価償却の期間が終わると、それまで経費として計上できていた金額がなくなります。
一方でローンの返済は続くため、帳簿上の利益は増えるのに手元のキャッシュは増えない、という状態に陥ることがあります。
これは「デッドクロス」と呼ばれ、不動産投資でつまずく典型的なパターンのひとつです。
物件を購入する段階で、減価償却が終わったあとにどう運用するか、いつ売却するかまで考えておくことが欠かせません。

土地の割合が大きい物件は効果が薄い

前述のとおり、土地は減価償却できません。
都心の一棟マンションなど、価格に占める土地の割合が大きい物件では、期待したほど経費計上額が伸びないことがあります。
営業資料の数字だけを見るのではなく、建物と土地の内訳を自分で確認する習慣をつけましょう。

節税だけを目的にしない

不動産投資はまとまった金額を長期間動かす取引です。
節税効果だけを目的に物件を選ぶと、立地や賃貸需要といった本来重視すべき収益性の判断がおろそかになりがちです。
節税はあくまで副次的なメリットとして捉え、「この物件は節税を抜きにしても持つ価値があるか」を基準に判断する姿勢が、長い目で見て後悔しない選び方につながります。

自分の状況が節税に向いているかどうかをもう少し広く確認したい場合は、サラリーマンの節税、何から始める?会社員でも取り戻せるお金の話、物件選びで失敗しないための考え方は不動産投資が「節税にならない」と言われる理由|仕組みと後悔しないための考え方も参考になります。
マンション投資を検討している場合はマンション投資は本当に節税になる?仕組みと落とし穴をやさしく解説もあわせて確認しておくと判断材料が増えます。

まとめ

サラリーマンの不動産節税は、減価償却と損益通算という2つの仕組みで成り立っており、課税所得が高い人ほど効果を実感しやすい一方、売却時の税負担やデッドクロスといった後から効いてくるリスクも抱えています。
数字の見え方だけで判断せず、仕組みを理解したうえで自分の状況に当てはまるかを確認してから検討することをおすすめします。

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末廣 大地
起業支援と財務コンサルティングが得意な税理士。
これまでの最高調達支援額は10億円。
町田・相模原エリア初の「決算料0円、月額10,000円~の税務顧問×創業融資支援0円×会社設立手数料0円の起業支援プラン」をリリース。
上智大学法学部法律学科卒。